SESとは何か。法律に「SES」という言葉は1つもなく、国の資料は「準委任」「常駐」で説明していた

客先ビルのセキュリティゲートで、2本の手が読み取り機に入館証をかざしているクレイアニメ風のイラスト。左の青い帯のカードには「社員」、右のオレンジの帯のカードには「協力会社」と書かれ、どちらの読み取り機も緑のランプがついている 未経験からIT転職
カツジン

書いている人:カツジン(元銀行員 → M&A仲介・IT人材紹介 → 経営)。企業が誰にいくら払うかを見てきた立場から書いています。詳しく

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SESは、「エンジニアの派遣のようなもの」と説明されることがあります。

確かめてみると、SESは法律で決められた契約の名前ではありません。そもそも、日本の法律に「SES」という言葉は1つも出てきません。国の資料では主に準委任の契約として説明されていて、労働者派遣法の「派遣」とは別の契約です。

ただし、実態として客先が指揮命令していれば、契約の名前にかかわらず労働者派遣として扱われます。

この記事では、法律の条文と国の資料だけで、SESが何なのかを1つずつ確かめます。

「SESは派遣の一種」は本当か

e-Gov法令検索のキーワード(条文の本文)検索で、「SES」「SES」「システムエンジニアリングサービス」「システム・エンジニアリング・サービス」を引くと、該当する法令は0件でした。

2026年9月26日に当編集部が検索した結果です。SESは、法律で決められた契約の名前ではありません。

では国は、SESをどう説明しているのか。公的な資料に出てくる説明を並べました。

資料 SESの説明(原文)
公正取引委員会(2022年) 技術者を派遣しシステム開発・インフラ環境構築等を行うサービスを提供する契約。準委任契約、常駐型が多い。
厚生労働省の研究調査報告書(2024年) システム開発における委託契約のひとつであり、エンジニアがクライアント企業に常駐し、業務内容や工数に基づいた報酬額が支払われるような契約形態
経産省の委託調査の脚注(2017年) 業務請負の一種とみなされる(受託した民間会社による説明)

出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(略称一覧)、厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(注記)、経済産業省の平成28年度委託調査報告書(脚注)

国の資料でも、書き方はそろっていません。公正取引委員会の説明には「派遣」という言葉が出てきますが、続く文では「準委任契約、常駐型が多い」と書いています。

3つの資料に共通しているのは、技術者が客先で働く契約だという点です。厚労省の報告書は、エンジニアが客先に「常駐」し、「業務内容や工数に基づいた報酬額」が支払われる契約と書き、公取委も「常駐型が多い」としています。

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中身は、民法の「準委任」

準委任は、民法に書かれている契約です。第656条は、準委任を次のように定めています。

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。民法 第656条(準委任)

「この節」は委任の規定(第643条〜第656条)です。法律行為ではない事務を任せる契約にも、委任の規定を準用する(必要な読み替えをして当てはめる)、という意味です。

システムの仕事でも、完成を約束すれば請負、作業の処理を任せるなら準委任と、契約の中身で分かれます。

経済産業省のガイドラインは、情報サービス・ソフトウェアの取引は、一般に請負・準委任・派遣の3つの形で行われるとしています。3つの違いを並べます。

請負 準委任 派遣
約束 仕事を完成させる 任された作業を処理する 派遣先の指示で働く
完成責任 負う 負わない ―
報酬 仕事の結果に払う 作業の量(工数)に払うのが一般的 派遣先が派遣元に派遣料金を払う
指揮命令 受注した会社がする 受注した会社がする 派遣先がする
根拠 民法632条 民法643条・656条 労働者派遣法2条

当編集部が要約。経済産業省のガイドラインに「SES」という言葉はない(公正取引委員会はSESを「準委任契約、常駐型が多い」と説明)。請負・準委任の「指揮命令」は、経済産業省のガイドラインの「請負と同様、発注者は受注者の作業者に指揮命令できない」という趣旨の記述による。出典:民法、労働者派遣法(e-Gov法令検索)、経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」(令和7年12月最終改訂)

準委任では、完成の責任を負わない代わりに、専門家として注意を尽くす義務(善良な管理者の注意義務、民法第644条)を負います。

報酬は何に払われるか

2020年4月1日に施行された改正民法で、成果に対して報酬を払う委任の条文(第648条の2。第656条で準委任にも当てはまる)が新しくできました。

ただ、国の資料では、SESは作業時間や工数に応じて報酬が払われる契約と説明されています(厚労省の報告書、経産省の委託調査の脚注)。

IPAのアジャイル開発向けのモデル契約は、業務従事者の単価を書いておき「稼働時間に合わせて料金を計算する」定め方を例に挙げています。そのうえで、この契約が前提とする形を「いわゆる履行割合型準委任」と書いています。

勝手に次の会社へは回せない

準委任の仕事を別の会社にさらに任せることには、法律の条件があります。

受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。民法 第644条の2(復受任者の選任等)

経産省のガイドラインも、原則として「請負」契約の場合は再委託できるが、「準委任」契約の場合は再委託できないとされている、と書いています。発注者の許諾があれば、再委託はできます。

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派遣との違いは、誰が指示するか

派遣は、労働者派遣法の第2条で次のように定められています。

自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること労働者派遣法 第2条第1号(労働者派遣)

派遣では、働く場所の会社(派遣先)が直接指揮命令します。

準委任のSESでは、客先が作業者に直接、仕事の進め方や労働時間などを指示する(指揮命令する)ことはできません。そうした指示は、エンジニアを雇っている会社が自ら行う決まりです。

要件の説明や情報の共有、技術的な相談まで禁じられているわけではありません(疑義応答集第3集)。

オフィスで、青いストラップの入館証を下げた紺のカーディガンの社員が、資料を手に、オレンジのストラップの入館証を下げたパーカー姿のエンジニアの画面を指さし、エンジニアが戸惑った顔で振り向いているクレイアニメ風のイラスト

この線を越えると、「偽装請負」になります。東京労働局は偽装請負を、書類上、形式的には請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約だが、実態としては労働者派遣であるもの、と説明し、違法としています。

厚生労働省の疑義応答集(第3集)は、システム開発で準委任の契約を結んでいても、発注者と受注者の労働者のあいだに指揮命令の関係があれば、労働者派遣事業にあたるとしています。

原文は「その契約の形式を問わず、労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けます」です。

受注者が管理責任者を置いていても、発注者側が開発担当者に直接、仕事の進め方や労働時間、作業の割り振りなどを指示していれば、偽装請負と判断されます(同Q3)。

この考え方は、アジャイル以外のシステム開発にも当てはまると、2026年5月に追記されました(同Q8)。

客先の面談とスキルシート

SESでは、配属の前に客先と面談することがあります。厚労省のガイドのQ&Aは、発注者が職務経歴書を求めたり事前面談をしたりすることは、配置の決定に影響を与えるため、労働者派遣事業などと判断されることがある、としています。

その結果、発注者が特定の人を指名したり、断ったりすれば、配置の決定に関与していると判断されます。

一方、スキルシートが個人を特定できず、発注者がそれで特定の人を指名したり断ったりできないものなら、提出を求めただけで直ちに偽装請負と判断されるわけではない、としています(疑義応答集第3集Q7)。

応募の前に確かめる

SESの会社に入るなら、客先で誰から指示を受けることになるのか、自社の責任者が現場にいるのかは、入る前に確かめておきたい条件です。

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対象は20代・高卒以上で、東京・埼玉・神奈川での就業を希望する方です(居住地は問いません)。

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客先で働く人は、どれくらいいるのか

SESで働く人の数を数えた国の統計はありません。

近いものとして、経産省の特定サービス産業動態統計調査が、情報サービス業の売上上位の企業(業界の年間売上のおおむね7割を占める企業)について、請負や外部委託の目的で他の企業に送り出した従業者の延べ日数を集計していました。業界全体に引き延ばした数ではありません。

2024年は386万延べ人日でした。経産省が段差を調整して公表した前年比では、2022年は1.3%、2023年は3.8%、2024年は4.0%減り、3年続けて減っていました。

一方、同じ企業が外から受け入れた延べ日数は、2024年に1,854万延べ人日で、送り出しの約4.8倍でした(当編集部の算出)。

法律上の派遣として働くIT技術者の数は、厚労省の統計で分かります。

6月1日現在 人数
2019年(令和元年) 141,107
2020年(令和2年) 151,157
2021年(令和3年) 160,331
2022年(令和4年) 172,445
2023年(令和5年) 182,701
2024年(令和6年) 183,983
2025年(令和7年) 197,425

労働者派遣事業で派遣されている「情報処理・通信技術者」の人数。出典:厚生労働省「労働者派遣事業の○年6月1日現在の状況(速報)」各年版の表2-4

派遣として働く情報処理・通信技術者は、6年で14万1,107人から19万7,425人へ、39.9%増えました(当編集部の算出)。

派遣は人数も料金も国が数えています。準委任のSESは、どれだけの人が客先で働いているのか、国の統計には出てきません。

SESの会社に入るなら、何を確かめるか

ここまでの条文と資料から、確かめておきたいことは3つです。

1つ目は、自分と会社の雇用契約です。SESの会社の社員として雇われるのか、雇用の形を求人票と労働条件の書面で確かめます。

2つ目は、会社と客先の契約の種類です。準委任なのか、請負なのか、派遣なのかで、本来は誰が作業の指示を出すかが変わります。多重の下請けなら、間に何社入っているかも確かめます。

3つ目は、現場で誰から指示を受けるかです。準委任や請負なのに、客先の社員から仕事の進め方や労働時間を毎日直接指示される形は、厚労省の資料では偽装請負と判断されうる働き方です。

客先常駐の外へ

SESで客先常駐を続けてきて、自社の中で働く席に移りたいと考えているなら、事業会社の情報システム部門、いわゆる社内SEという選択肢があります。

社内SE転職ナビは、社内SE・情シス(情報システム部門)の転職に特化した専門サービスです。

公式サイトには「自社の中で働きたいITエンジニアに向けた社員求人が多数あります」とあります。

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エンジニアの実務経験がある方が対象です(実務未経験・エンジニア以外の職種は対象外)。45歳未満で、東京・神奈川・千葉・埼玉、大阪・京都・兵庫、北海道のいずれかでの勤務を希望する方が対象になります。

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よくある質問

SESとは簡単に言うと何ですか?

エンジニアが客先に常駐して、作業の量に応じて報酬が支払われる形の契約の呼び方です。法律にSESという言葉はなく、公正取引委員会の資料は準委任契約が多いとし、厚生労働省の資料は委託契約のひとつと説明しています。準委任は民法第656条に定められた契約で、仕事の完成ではなく、任された作業を処理することを約束します。

SESと派遣の違いは何ですか?

作業の指示を誰が出すかです。派遣は、派遣先が労働者に直接指揮命令します(労働者派遣法第2条)。準委任のSESでは、客先は作業者に直接指揮命令できず、指揮命令はエンジニアを雇っている会社が自ら行うことになっています。経済産業省のガイドラインも、準委任では発注者は受注者の作業者に指揮命令できないとしています。

SESと請負の違いは何ですか?

完成の責任です。請負は仕事を完成させることを約束し、その結果に報酬が払われます(民法第632条)。準委任のSESは完成の責任を負わず、一般に作業の量(工数)に対して報酬が払われます。どちらも、発注者が作業者に直接指揮命令できない点は同じです。

SESは違法ですか?

準委任の契約そのものは違法ではありません。ただし、客先が作業者に直接指揮命令するなど、実態が労働者派遣になっていれば偽装請負として違法です。厚生労働省の疑義応答集は、システム開発で準委任の契約を結んでいても、指揮命令の関係があれば契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当するとしています。

今日できることを1つ。いまの現場か、応募したい会社の求人票で、客先との契約が準委任・請負・派遣のどれなのかを確かめてみてください。契約の種類が分かれば、本来は誰が作業の指示を出すべきかが分かります。実際には客先から直接指示されているなら、契約の名前にかかわらず、労働局に相談できます。

参考出典
民法・労働者派遣法(e-Gov法令検索)
経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」(令和7年12月最終改訂)・「特定サービス産業動態統計調査」長期データ(情報サービス業)
厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」・「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」・「労働者派遣事業の6月1日現在の状況」・「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(令和6年3月)/東京労働局「偽装請負について」
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(令和4年6月)/IPA「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」

特定サービス産業動態統計調査(情報サービス業)は、業界の全国年間売上高のおおむね7割を占める売上上位企業だけの集計で、業界全体の数には換算されていません。2024年12月分で終了しました。延べ人日は人数ではなく、前年比はリンク係数で調整した公表値です。この記事は法律の一般的な説明で、個別の契約や働き方が適法かどうかの判断は、労働局などの窓口に相談してください。サービス内容・対象条件は公式サイトの記載(2026年9月時点)を確認してください。

カツジン

この記事を書いた人:カツジン

平成2年生まれ・九州在住

元銀行員。M&A仲介とIT人材紹介の会社で、会社の値段と人の市場価値が決まる現場を3年見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。

誰に、何のために書いているか

文系・未経験からITへ動くか迷っている人に向けて書いています。国の統計と、人材紹介で「企業が誰にいくら払うか」をみてきた経験から、いまどこにいて次に何をすれば年収が動くのかを書いています。きれいごとは書きません。

約束していること

数字は一次情報まで遡って確かめます。向いていない人がいることも、そのまま書きます。記事には広告を含みますが、条件に合わない人には勧めません。

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