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求人票の会社紹介に「SIer」とだけ書いてあって、何をする会社なのか分からないまま、応募するかどうか迷っている人へ。
SIerは和製英語で、国の産業分類にこの言葉は出てきません。ただ、国はかつてこの仕事の中身を定義していて、建設業の「ゼネコン」にたとえていました。
この記事では、国と公的機関の統計と資料だけで、SIerとは何か、どれくらいの規模で、どんな構造の中にあるのかを確かめます。
SIerとは、どんな会社のことですか?
情報システムの開発を、設計から保守まで丸ごと請け負う会社です。総務省の令和元年版情報通信白書は、システムインテグレーションを担う事業者が「SIer(エスアイヤー)という和製英語で呼ばれることも多く」と書いています。
経済産業省は、かつてあった「システムインテグレーション登録制度」の資料で、この仕事を次のように説明していました。
「ユーザーの要求内容を把握し、これに基づいて基本設計、プログラム作成、運用の準備、保守に至るまでを一貫して請け負うサービス形態であり、建設業でいえば『ゼネコン』が提供するサービスに相当するもの」
総務省の日本標準産業分類では、「受託開発ソフトウェア業」の例示に「システムインテグレーションサービス業」が載っていて、SIを主に行う事業所はここに分類されます。同じソフトウェアの会社でも、作り方によって分類が分かれます。
| 国の産業分類 | 番号 |
|---|---|
| 受託開発ソフトウェア業(顧客の委託でシステムを作る。SIを含む) | 3911 |
| 組込みソフトウェア業(家電や車などの機器に組み込むソフトを作る) | 3912 |
| パッケージソフトウェア業(不特定の利用者向けの製品を作る) | 3913 |
| アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ(SaaSなど) | 4012 |
括弧内は当編集部の要約。3911〜3913は中分類39「情報サービス業」、4012は中分類40「インターネット附随サービス業」。出典:総務省「日本標準産業分類」(令和5年7月告示・令和6年4月1日施行)
SIerを名乗るのに、国の免許はいりません。経産省の登録制度は任意の登録で、2011年3月31日に廃止されています。
廃止前の平成21年度には220社が登録され、平成20年度に登録された企業と合わせて454社でした(登録の有効期間は2年)。
システムエンジニアとはどんな仕事か。厚労省の4種類のSEを並べたら、自分でコードを書くのは2種類だけだった
SIerは、どこから生まれたのですか?
令和元年版の情報通信白書は、SIerの成り立ちを4つの流れで説明しています。ICTを使う企業の情報システム部門の子会社化、コンピューターのメーカーの参入、日本電信電話公社のデータ通信事業、商社の情報システム子会社です。
| 年 | 白書に出てくる例 |
|---|---|
| 1967年 | 日本電信電話公社がデータ通信本部を設置(現NTTデータ) |
| 1969年 | 住商コンピューターサービスを設立(現SCSK) |
| 1972年 | 伊藤忠データシステムを設立(現伊藤忠テクノソリューションズ) |
| 1980年 | 新日鐵が日鐵コンピュータシステムを設立(現日鉄ソリューションズ) |
| 1980年代末〜 | 情報システム関連業務の外部委託が広がり、情報システム部門の子会社化が進む |
社名は白書の表記どおり。出典:総務省「令和元年版 情報通信白書」第1部第1章第1節「SIerの登場と独自の発展」
白書は、この外部委託の広がりと子会社化によって、情報システムの構築・運用を主な業務とする「システムインテグレーションという業態が成立することになった」と書いています。
さらに、日本のSIerの特徴として受託開発型中心の開発と多重構造を挙げ、「人月商売」と呼ばれるような労働集約的な産業となっているとされている、とも書いています。
SIerの仕事は、どれくらいの規模ですか?
経産省の特定サービス産業動態統計調査は、情報サービス業の売上を業務の種類ごとに集計しています。最終年の2024年、上位企業の売上は17.9兆円で、その4割がSIでした。
| 業務の種類 | 売上 | 構成比 |
|---|---|---|
| 受注ソフトウェア | 11.04兆円 | 61.6% |
| うちシステムインテグレーション | 7.32兆円 | 40.8% |
| システム等管理運営受託 | 2.24兆円 | 12.5% |
| ソフトウェアプロダクツ | 1.92兆円 | 10.7% |
| 計算事務等情報処理 | 1.24兆円 | 6.9% |
| そのほか(ITコンサルや研修などの「その他」、調査、データベース) | 1.48兆円 | 8.3% |
2024年(暦年)。調査対象は全国の年間売上高のおおむね70%をカバーする売上上位の企業で、業界全体の総額ではない。構成比は当編集部の算出。本調査は2024年12月分で終了した。2025年1月分からは総務省「サービス産業動態統計調査」が始まったが、調査の設計が違うため数字はそのままつながらない。出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」長期データ(情報サービス業)
この調査がSIとして数えるのは、コンサルティング、計画、仕様、設計、開発とテスト、ソフトウェアの選定と導入、カスタマイズ、機器の選定と導入、ネットワークの工事、保守の10項目すべてを、1つの契約で請け負った売上です。
SIの売上は前の年より9.7%増えていました。この調査の対象企業で情報サービスの仕事に就く常用の従業者は46万4,015人(2024年12月末)で、7割が技術系です。
元請と下請は、どう分かれていますか?
建設業と同じように、SIの仕事にも元請と下請があります。経産省の「DXレポート2」は、大手ベンダー企業がユーザー企業から業務を請け負い、その一部を下請企業に開発委託する多重下請構造が取られてきた、と書いています。
総務省・経産省の2025年経済構造実態調査では、2024年の情報サービス業の売上43.5兆円のうち、ソフトウェアの受注制作(組込みを除く)が元請で16.9兆円、下請で4.3兆円でした。
受注制作の中で比べると、元請が79.9%、下請が20.1%です。下請の割合は、2021年の24.1%から23.0%、22.5%、20.1%と、3年続けて下がっています(いずれも当編集部の算出)。
ただし2024年分は、母集団を新しくしたあとの集計で、それまでとは基準が少し違います。
では、何次まで下がるのか。3次以降の下請まで分けて聞いた最後の調査は、2021年の情報通信業基本調査(2020年度の実績)です。
| 資本金 | 元請 | 1次 | 2次 | 3次〜 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000万〜1億円 | 84.0 | 59.1 | 28.8 | 10.0 |
| 1億〜3億円 | 89.6 | 54.5 | 20.5 | 5.7 |
| 3億円以上 | 95.8 | 45.6 | 9.9 | 3.8 |
| 全体 | 86.3 | 56.8 | 25.3 | 8.6 |
単位は%。情報サービス業で受託をした企業のうち、元請・各次の下請として受託した企業の割合(複数回答)。対象は資本金3,000万円以上の企業で、回答2,328社。出典:総務省・経済産業省「2021年情報通信業基本調査」(2020年度実績)
資本金3億円以上の会社は95.8%が元請の仕事を持ち、2次の下請は9.9%。資本金3,000万〜1億円の会社では、2次が28.8%、3次以降が10.0%に上がります。
仕事の出どころも規模で違います。2019年の実績で、ソフトウェア業の事業所(従業者5人以上)のソフトウェア業務の売上のうち、契約先が統計上の「同業者」だった分を見ました。
資本金10億円以上の会社の事業所では11.0%、1,000万〜5,000万円の会社の事業所では39.5%です(当編集部の算出)。資本金の小さい会社のほうが、同業者から仕事を受ける割合が高い傾向です。

売上は一部の大手に集まっています。
2025年の経済構造実態調査では、情報サービス業の3万5,030社のうち、2024年の売上が100億円以上だった524社(1.5%)が、売上全体の74.1%を占めていました(当編集部の算出)。
同じ「SIer」という看板でも、元請の仕事が多い会社もあれば、2次、3次の下請の仕事が多い会社もあります。1つの会社が両方を持っていることも多く、どの位置の仕事が多い会社かは、入る前に確かめておきたい点です。
入る前に、位置を確かめる
SIerの求人票だけでは、その会社が元請の仕事をどれくらい持っているのかは分かりにくいことがあります。未経験で入るなら、最初の会社がどの位置の仕事を多く受けているかは、任される仕事の中身にかかわります。
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SIerはやめとけ? 下請法の違反件数が全業種トップの686件だった
日本のIT人材は、どちら側の会社にいますか?
多くは、発注を受けるIT企業の側にいます。IPAの調べでは、日本のIT人材の73.6%がIT企業に所属していて、それ以外の会社にいるのは26.4%でした。米国は逆で、IT企業にいるのは35.1%です。
| 国(年) | IT企業 |
|---|---|
| 日本(2020年) | 73.6% |
| フランス(2015年) | 46.6% |
| イギリス(2015年) | 46.1% |
| カナダ(2014年) | 44.0% |
| ドイツ(2015年) | 38.6% |
| 米国(2021年) | 35.1% |
「IT企業」の列は、情報処理・通信に携わる人材のうち、IT企業(ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット附随サービス業の3業種)に所属する人の割合。IT企業にはWeb系や自社サービスの会社も含み、SIerだけの割合ではない。日米はIPA「DX白書2023」、ほかの国はIPA「IT人材白書2017」
作り方にも差が出ています。IPAの2024年度の調査で、コアの事業のシステムを作る方法としていちばん多かったのは、日本では「外部委託による開発」の37.8%、米国では「内製による自社開発」の48.5%でした。
経産省の「DXレポート」(2018年)は、日本では要件定義から請負契約を結ぶケースも少なくないとして、それを「ユーザ企業がベンダー企業に要件定義から丸投げの状態になってしまっており」と書いています。
2020年の「DXレポート2」は、日本ではIT人材がベンダー企業に偏在していると指摘しています。
そのうえで、ユーザー企業が事業とITを結び付けられないことから丸投げになりがちで、それが受託開発への依存と多重下請構造の遠因になってきた、としています。
SESはやめとけ? 派遣は1日34,382円まで公表され、SESは人数さえ数えられていない
SESという契約そのものの中身は、法律の条文と国の資料で別に確かめました。
SESとは何か。法律に「SES」という言葉は1つもなく、国の資料は「準委任」「常駐」で説明していた
SIerの外に移る道はありますか?
あります。ただ、発注する側の会社がそろって自分で作る方向に動いているわけではありません。
IPAの同じ調査で、システム開発の内製化を「進めている」と答えた日本の企業は22.3%でした。いちばん多かったのは「外部開発を今後も利用予定であり、内製化は進めていない」の29.3%です。
従業員1,001人以上の会社では、36.7%が「内製化を進めている」と答えています。内製化を進めている企業の82.3%は、課題に「人材の確保や育成が難しい」を挙げていました。
SIerで要件定義や設計を経験した人は、発注する側の会社の情報システム部門、いわゆる社内SEの席に移る道があります。元請の仕事で顧客と要件を詰めてきた経験は、発注する側に回ったときにも生かせる場面があります。
社内SEへの転職は難しいのか。情報処理技術者の席を数えたら、45万人分がIT業界の外にあった
発注する側の席
SIerで要件定義や設計、顧客との調整を経験してきたなら、その経験を持って、システムを発注する側の会社に移る選択肢があります。
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よくある質問
SIerとは簡単に言うと何ですか?
顧客の情報システムを、設計から開発、運用の準備、保守まで一貫して請け負う会社です。経済産業省はこのサービスを建設業の「ゼネコン」にたとえていました。SIerは和製英語で、総務省の日本標準産業分類では、SIを主に行う事業所は「受託開発ソフトウェア業」に分類されます。
SIerとSESの違いは何ですか?
SIerは、システムの開発を請け負う会社の種類です。SESは、技術者が顧客のもとで働く形の契約の呼び方で、会社の種類ではありません。SIerの下請として、SES契約の技術者が働く現場もあります。
SIerは元請と下請でどれくらい違いますか?
2025年の経済構造実態調査(2024年の売上)では、情報サービス業のソフトウェア受注制作(組込みを除く)の売上のうち、元請が79.9%、下請が20.1%でした(当編集部の算出)。2021年の情報通信業基本調査(2020年度の実績。資本金3,000万円以上の企業が対象)では、資本金3億円以上の会社の95.8%が元請の仕事を持ち、資本金3,000万〜1億円の会社では2次の下請が28.8%、3次以降が10.0%でした。
SIerを名乗るのに資格や登録は必要ですか?
必要ありません。経済産業省のシステムインテグレーション登録制度は任意の登録で、2011年3月31日に廃止されました。
SIerは、国がかつてゼネコンにたとえた仕事です。
同じ看板でも、元請の仕事が多いか、下請の仕事が多いかで、座る席が変わります。
参考出典
総務省「日本標準産業分類(令和5年7月告示)大分類G 情報通信業」/総務省「令和元年版 情報通信白書」
経済産業省「システムインテグレーション登録制度の概要」(平成21年9月)・「特定サービス産業動態統計調査」(長期データ)・「DXレポート」(2018年)・「DXレポート2」(2020年)
総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査」・「2021年情報通信業基本調査」・「2020年経済構造実態調査(乙調査)」
IPA「DX白書2023」・「IT人材白書2017」・「DX動向2025」
特定サービス産業動態統計調査は売上上位企業の集計で、経済構造実態調査は法人企業全体の推計です。調査ごとに対象と年が違うため、数字どうしを直接足し引きすることはできません。元請と下請の売上は、発注元と発注先で重なって計上されるため、足しても市場規模にはなりません。IPA「DX動向2025」の日本の回答企業には、情報通信業の企業も含まれます。サービス内容・対象条件は公式サイトの記載(2026年9月時点)を確認してください。


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