「給料が上がらない」は、もう日本全体の話ではない。産業別に見たら差は3倍だった

夜のダイニングテーブルで給与明細を手に持ち、じっと見つめている男性を描いたステンシル版画風イラスト 未経験からIT転職
カツジン

書いている人:カツジン(元銀行員 → M&A仲介・IT人材紹介 → 経営)。企業が誰にいくら払うかを見てきた立場から書いています。詳しく

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給料が上がらない。物価だけ上がっていく。

そう思って調べていると思います。ただ日本全体の統計を見ると、賃金はいま上がっています。

しかも34年ぶりの水準で。ではなぜ実感がないのか。産業別に分けたら、答えが出ていました。

まず、日本全体の数字です

厚生労働省が今月発表した、6月分の賃金統計です。

+3.4%

現金給与総額の前年同月比
5か月連続で3%以上は、34年3か月ぶり

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果速報」(2026年8月5日公表・事業所規模5人以上)。物価を差し引いた実質賃金も前年同月比1.6%増で、6か月連続のプラスです。

物価の上昇が鈍り、賃金の伸びがそれを上回った。数字の上では、もう「上がらない国」ではありません。

それでも実感がないなら、平均の中のどこにいるかを見る必要があります。

産業別に分けると、こうなります

同じ統計を、産業ごとに並べ替えます。

情報通信業+11.6%
運輸・郵便+5.4%
建設業+4.9%
全産業 平均+3.4%
製造業+0.2%
電気・ガス−0.4%

出典:同上・第1表(就業形態計)。現金給与総額の前年同月比。6月は賞与の支給月にあたるため金額そのものは大きく出ますが、ここで比べているのは前年の同じ月からの伸び率です。

情報通信業だけ、全産業平均の3倍以上。
製造業は+0.2%、電気・ガス業はマイナスでした。

「日本の賃金」という平均が、ここまで割れています。同じ国の同じ月で、伸びが11.6%の場所と、マイナスの場所がある。

賞与の影響を除いた所定内給与(基本給にあたる部分)で見ても、情報通信業は+11.4%。全産業平均は+3.4%です。一時金だけの話ではありません。

なぜ、産業でここまで差がつくのか

ここは精神論ではなく、お金の出どころの話です。賃上げの原資は、粗利からしか出ません。

値上げ
できる
単価を上げても客が離れない。粗利が増える。だから配れる
値上げ
できない
価格を客に握られている。コストが上がっても転嫁できず、粗利が減る
左は取引先に対等に条件を提示する人物、右は書類を突き返される人物を左右に分けて対比したステンシル版画風イラスト

銀行で10年、決算書を読んでいました。賃上げできる会社とできない会社の差は、社長の気前ではなく、値決めの力です。

いま単価が上がっているのは、人が足りず、かつ需要が伸びている領域。IT分野はそこに当たります。

逆に、原材料やエネルギーのコスト増を価格に乗せきれない産業では、賃上げの原資そのものが出てこない。そこで働く人が怠けているわけではありません。

この構造をもう一段掘ると、同じIT業界の中でも年収が割れます。理由はお金の流れ方にまとめました。

では、個人に何ができるのか

身も蓋もない結論ですが、頑張る量より、頑張る場所のほうが金額に効きます。

まず、自分の産業の数字を知る。会社の中の評価ではなく、産業全体が伸びているのかを見る。ここがマイナスなら、社内で頑張っても原資がありません
伸びている産業の入口を調べる。未経験で入れる職種があるかどうかは、産業によって大きく違います
入口の年収だけで判断しない。移った直後は下がることもあります。見るべきは3年後の位置です
ただし、正直に 産業を変えれば自動的に給料が上がるわけではありません。未経験で入る場合、最初の年収はむしろ下がることがあります。未経験IT転職の年収のリアルに、下がってから戻るまでの実際を書きました。

それでも、伸び11.6%の産業と、マイナスの産業に同じ年数いたら、差は開き続けます。複利で効くのはここです。

自分の市場価値は、外の人に聞いたほうが早い

いまの会社で給料が上がらない理由が、あなたの評価なのか、産業の構造なのか。これは社内にいると分かりません。判断材料は外にあります。

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よくある質問

本当に日本の賃金は上がっているのですか

統計上は上がっています。2026年6月の現金給与総額は前年同月比3.4%増で、5か月連続で3%以上の伸びとなりました。これは34年3か月ぶりの水準です。物価を差し引いた実質賃金も6か月連続でプラスになっています。

それなのに自分の給料が上がらないのはなぜですか

平均の中で割れているからです。産業別に見ると、情報通信業が11.6%増である一方、製造業は0.2%増、電気・ガス業はマイナスでした。賃上げの原資は粗利から出るため、価格転嫁ができている産業とそうでない産業で差が開きます。

給料が上がらないので転職を考えていますが、業界は変えるべきですか

会社を変えても産業が同じなら、原資の制約は変わりません。産業全体が伸びていない場合は、業界そのものを変える選択肢を検討する価値があります。ただし未経験で入る場合、最初の年収は下がることがあります。

30代からでも業界を変えられますか

可能ですが、20代より選択肢は狭くなります。求人の年齢条件は職種によって差があるため、まず自分が応募できる範囲を確認するところから始めるのが現実的です。

給料が上がらないのは、あなたが怠けているからではありません。

ただ、日本全体のせいでもなくなりました。上がっている場所は、統計の上にはっきり存在しています。

問題は、そこに自分がいないこと。それだけです。

※ 本記事の賃金データは厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果速報」(2026年8月5日公表・事業所規模5人以上・就業形態計)に基づきます。速報値は確報で改訂される場合があります。産業別の傾向に関する解釈は、筆者が銀行・M&A仲介・人材紹介で見てきた実務に基づく整理です。

カツジン

この記事を書いた人:カツジン

平成2年生まれ・九州在住

元銀行員。M&A仲介とIT人材紹介の会社で、会社の値段と人の市場価値が決まる現場を3年見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。

誰に、何のために書いているか

文系・未経験からITへ動くか迷っている人に向けて書いています。国の統計と、人材紹介で「企業が誰にいくら払うか」をみてきた経験から、いまどこにいて次に何をすれば年収が動くのかを書いています。きれいごとは書きません。

約束していること

数字は一次情報まで遡って確かめます。向いていない人がいることも、そのまま書きます。記事には広告を含みますが、条件に合わない人には勧めません。

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