クラウドエンジニアはやめとけ。3つの理由のうち、2つは企業側の数字と逆だった

深夜のサーバールームで年上のエンジニアが若手に説明しており、壁に「夜間対応」と書かれた紙が貼られている 未経験からIT転職
カツジン

書いている人:カツジン(元銀行員 → M&A仲介・IT人材紹介 → 経営)。企業が誰にいくら払うかを見てきた立場から書いています。詳しく

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人材紹介にいたころ、インフラ系の求人を担当していた時期があります。

そのころ、社内の先輩に言われたことがあります。クラウドは案件が増えているけれど、入る人には勧めにくい、と。理由は3つありました。夜間の対応がある。障害が起きたら呼ばれる。そして、覚えたことが数年で古くなる。

ネットで「クラウドエンジニア やめとけ」を見ると、いま並んでいる理由もだいたい同じです。私自身、この3つはその通りだと思っていました。

ただ、企業側が何を考えてクラウドを使っているかの調査を読んで、2つについては見方を変えました。

まず、言われている3つを並べます

やめとけの理由として挙がるのは、だいたいこの3つに集約されます。

1. 運用と監視が地味で、夜間の対応がある作るより、動いているものを見張る時間のほうが長い。障害は時間を選ばない。
2. コスト削減のために入れられるので、値切られる安くするために導入されるなら、担い手の単価も下がるはずだ、という理屈。
3. 覚えたことが数年で古くなるサービスの仕様が変わり続けるので、勉強が終わらない。

どれも、現場で実際に聞いた話です。ここから、企業側の数字と突き合わせていきます。

企業がクラウドを使う理由を見ると、1つ目は逆でした

総務省が毎年、企業に対してクラウドを使っている理由を聞いています。複数回答で、上位はこうなっていました。

場所、機器を選ばずに利用できるから50.1%

資産、保守体制を社内に持つ必要がないから42.5%

安定運用、可用性が高くなるから40.3%

災害時のバックアップとして利用できるから40.1%

サービスの信頼性が高いから32.2%

容量の変更に迅速に対応できるから30.8%

システムの拡張性が高いから22.1%

既存システムよりもコストが安いから19.0%

総務省「令和6年 通信利用動向調査(企業編)」より。クラウドを利用している企業(n=1,941)への複数回答。「その他」を除く8項目。

2番目に多いのが、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」で42.5%です。

これは、地味だと言われている運用と監視を、企業が自社で抱えたくないと言っているということです。抱えたくないから、外に出す。外に出された仕事には、引き受ける人が要ります。

地味だから価値が低いのではなく、企業が自分でやりたくないから外に出ている。やりたくない仕事が集まる場所は、なくなりにくい場所でもあります。

2つ目の「値切られる」は、順位が答えでした

もう一度、さきほどの並びを見てください。いちばん下にあるのが「既存システムよりもコストが安いから」で19.0%です。

安いから使っている企業は、5社に1社もありませんでした。

企業がクラウドに求めているのは、場所を選ばないこと、保守を持たないこと、止まらないこと。値段の話は、いちばん下です。

安さで選ばれた仕事は買い叩かれます。ただ、この順位を見るかぎり、クラウドはそういう理由で選ばれていません。

効果はどうだったのか

導入した企業に、効果があったかを聞いた項目もあります。

「非常に効果があった」が33.3%、「ある程度効果があった」が54.0%。合わせて87.3%が効果ありと答えています。「あまり効果がなかった」は0.9%でした。

入れてみたが失敗だった、という話にはなっていません。定着しているということです。

3つ目の「古くなる」は、その通りです

ここは反証できません。むしろ、はっきりそうだと言っておきます。

クラウドのサービス仕様は変わり続けます。3年前に覚えた手順が、そのまま使えるとは限りません。資格にも有効期限があるものが多く、取り直しが要ります。

勉強が終わらない仕事です。これは向き不向きがはっきり出るところで、続かない人には本当に続きません。

ただ、これは裏を返すと、先に入った人の貯金が効きにくい分野でもあります。10年やっている人と3年の人の差が、他の領域ほど開かない。未経験から入る人にとって、この性質は不利ではありません。

まだ入っていない企業には、何が残っているか

クラウドを使っていない企業に、その理由も聞いています。1位は「必要がない」で46.0%。そして2位が「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」で29.6%でした。

コストが理由で止まっているということは、やる仕事自体はまだ残っているということです。移す作業が終わっていない会社が、まだあります。

事務所の機材置き場で、女性が書類を手に古い機材の棚を見比べている

そもそも企業のクラウド利用がどこまで進んでいるかは、Webエンジニアに未経験からなれるかのほうで、サイトの保有率と並べて見ました。作る仕事が飽和する一方で、動かす仕組みのほうが伸びています。

ここまでの数字は業界全体の話で、自分が入れる求人があるかどうかは別の問題です。クラウドの求人が増えていても、未経験を採る枠かどうかは求人票を見ても分かりません。

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やめとけと言われる割に、辞めている人は多いのか

ここまでは企業側の数字でした。働く側の数字も見ておきます。

厚生労働省が毎年、新規学卒就職者の離職状況を公表しています。2026年10月24日に出た最新版から、産業別の3年以内離職率を引きます。大学卒の数字です。

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2026年10月24日公表。新規大卒就職者の産業別・就職後3年以内離職率。上位5産業と産業計、情報通信業を抜粋
産業 3年以内
宿泊業、飲食サービス業 55.4%
生活関連サービス業、娯楽業 54.7%
教育、学習支援業 44.2%
医療、福祉 40.8%
調査産業計 33.8%
情報通信業 27.2%

情報通信業は27.2%。産業計より6.6ポイント低く、抜き出した中でいちばん低い側にあります。最も高い宿泊業・飲食サービス業とは28.2ポイント、2.04倍の開きです。

やめとけという言葉が最も多く並ぶ業界が、実際に辞める人の割合では低い側にありました。

ただし、この数字の限界も書いておきます

これは新卒で入って3年以内の話であり、クラウドエンジニアという職種単体の数字ではありません。情報通信業には営業も事務も含まれます。中途で入った人も対象外です。

それでも、業界全体として人が定着していないわけではない、とは言えます。第二新卒の区分そのものの数字は第二新卒とは何かにまとめました。会社の規模によって、この離職率が2.13倍変わることも書いています。

結局、誰がやめておくべきか

3つのうち2つは、企業側の数字と逆でした。残る1つは本当です。整理すると、こうなります。

向いていない一度覚えて、あとは同じやり方で食べていきたい人仕様が変わり続けるので、学び直しから逃げられません。ここが嫌なら、他の領域のほうが穏やかです。
向いていない作ることだけをやりたい人動いているものを止めない仕事が中心です。ゼロから作る比率は高くありません。
向いている仕組みが動く理由を知りたい人どこにデータがあって、何が起きたら止まるのか。この関心が続く人は、経験年数の差を詰めやすい領域です。

未経験からこの方向に入るなら、ネットワークの基礎から順に踏むのが遠回りに見えて早いです。順番については未経験からインフラ・ネットワークエンジニアへにまとめました。資格の位置づけはCCNAは無駄な資格かのほうで、企業の評価順位から確かめています。

よくある質問

クラウドエンジニアはやめとけと言われるのはなぜですか?

運用と監視が地味で夜間対応があること、コスト削減目的で導入されるため値切られること、覚えたことが数年で古くなることの3つが主な理由です。ただし総務省の令和6年通信利用動向調査では、企業がクラウドを使う理由の2位が「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.5%で、「既存システムよりもコストが安いから」は19.0%と最下位でした。前の2つは企業側の数字と逆を向いています。

クラウドエンジニアは単価が安く買い叩かれますか?

総務省の令和6年通信利用動向調査で、クラウドを使う理由に「既存システムよりもコストが安いから」を挙げた企業は19.0%で、8項目のうち最下位でした。企業が求めているのは場所を選ばないこと50.1%、保守体制を社内に持たないこと42.5%、安定運用40.3%であり、安さを目的に導入している企業は5社に1社もありません。

未経験からクラウドエンジニアを目指すのは不利ですか?

サービス仕様が変わり続けるため学び直しが終わらない領域ですが、これは裏を返せば先に入った人の経験の貯金が効きにくいということでもあります。経験年数の差が他の領域ほど開かないため、未経験から入る人にとって不利な性質ではありません。ただし一度覚えたやり方で長く食べていきたい人には向きません。

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やめとけと言った先輩は、3つを並べて話していました。
3つのうち、あなたが引っかかっているのはどれでしょうか。
夜間の対応と単価の話なら、企業側の数字は逆を向いています。学び直しの話なら、それは本当です。
引っかかっているのがどれかで、答えは変わります。

※ 数値は総務省「令和6年 通信利用動向調査(企業編)」に基づきます。従業者100人以上の企業が対象で、利用理由はクラウドを利用している企業(n=1,941)への複数回答、利用しない理由は利用していない企業(n=171)への複数回答です。利用しない理由は回答企業数が少ないため、参考値として扱ってください。夜間対応や資格の更新に関する記述は、筆者が人材紹介に在籍していた際に現場から聞いた内容と、各クラウド事業者が公開している認定資格の有効期限に基づく整理です。

参考出典:総務省「令和6年 通信利用動向調査」報告書(企業編)第3章 クラウドコンピューティングの利用状況。

カツジン

この記事を書いた人:カツジン

平成2年生まれ・九州在住

元銀行員。M&A仲介とIT人材紹介の会社で、会社の値段と人の市場価値が決まる現場を3年見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。

誰に、何のために書いているか

文系・未経験からITへ動くか迷っている人に向けて書いています。国の統計と、人材紹介で「企業が誰にいくら払うか」をみてきた経験から、いまどこにいて次に何をすれば年収が動くのかを書いています。きれいごとは書きません。

約束していること

数字は一次情報まで遡って確かめます。向いていない人がいることも、そのまま書きます。記事には広告を含みますが、条件に合わない人には勧めません。

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