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人材紹介をしていた頃、忘れられない2人がいます。
同じ現場で、同じような仕事をしているエンジニア。スキルの差も、大きくはない。それでも年収は150万円ほど違いました。
差を作っていたのは、腕前ではありません。2人の給料が、どこを通って届いていたか。所属する会社の、商流の位置でした。
元・IT人材紹介のカツジンです。銀行で決算書を読み、M&Aで会社の値段を見てきた立場から言うと、エンジニアの年収は、お金の流れを追うといちばんよく分かります。
この記事では、SES・SIer・自社開発という3つの働き方を、お金の流れで解きます。読み終わる頃には、求人票の年収欄の裏側が見えるようになります。
あなたの給料の、源流はどこか
エンジニアの給料は、会社が払っているように見えて、源流は別にあります。どこかの誰かが、システムやサービスにお金を払っている。その一部が、いくつかの会社を経由して、あなたに届きます。
問題は、経由する会社の数です。仮の例で見てください。
お金の流れの仮の例(発注元が月100万円払う案件の場合)
↓ 元請けが管理費などを差し引く
↓ 2次請けがさらに差し引く
↓ 3次請けがさらに差し引く
↓ 所属会社の経費・利益を引いた残りが給与原資
※各層が2割ずつ差し引くと仮定した架空の計算です。実際の比率は会社・案件により異なります。構造の理解のための例とお考えください。
同じ現場で同じ仕事をしていても、この階段の何段目の会社に所属しているかで、給与の原資がまるで違う。冒頭の2人の150万円の差は、これでした。
ちなみにこの多重下請けの構造は、私の意見ではありません。経済産業省が下請取引の適正化を求めるガイドラインを設けているほど、業界に定着した構造です。
SES・SIer・自社開発。お金の流れで見る3つの働き方
この視点で3つの働き方を並べると、それぞれの性格がはっきりします。
※ 表は横にスクロールできます →
| 自社開発 | SIer(元請け側) | SES | |
|---|---|---|---|
| お金の源流 | 自社サービスの売上から直接 | 発注元から直接受注 | 商流の位置による(浅ければ厚く、深ければ薄い) |
| 給与の傾向 | 事業が伸びれば還元も大きい。ただし事業が傾けば逆回転 | 安定して高め。大手ほど層が厚い | 会社の還元率と商流次第で大きく変わる |
| 未経験の入りやすさ | 狭き門 | 新卒中心。中途未経験は少なめ | 広い。未経験の入口の多くはここ |
| 注意点 | 倍率が高い | 設計や管理が中心で、手を動かす時間は減ることも | 配属先と商流の当たり外れが大きい |
誤解してほしくないのは、SESが悪ではないことです。未経験の入口として門戸がいちばん広いのはSESですし、商流の浅い案件を持ち、還元率の高い会社も実在します。問題はSESという形態ではなく、深い商流の底で、経験も積めない場所に入ってしまうこと。この構造は「SESを辞めたいは甘えじゃない」で詳しく書きました。
※ 社内SEに移った場合の年収の分かれ方は、「社内SEはやめとけの正体」で公的データとあわせて解説しています。
職種の区分で見ても同じことが起きています。国の統計ではSEが2つに分かれていて、年収差は178万円ありました。
年収を決める順番。腕前は、実は2番目
ここまでを整理すると、エンジニアの年収はこの順番で決まっています。
1番目に、どこに立っているか。
2番目に、何ができるか。
腕を磨けば年収が上がる。それは本当です。ただし同じ腕なら、立ち位置で受け取る額が変わる。だから年収の話は、スキルアップの前に、まず構造の話なんです。
これは未経験の入口選びでも、すでに業界にいる人の転職でも、同じように効きます。
未経験でこれから入る人へ
求人票に、商流は書いてありません。教育体制と配属先の実態も書いてありません。だからこそ、入る前に確認する術を持っているかどうかで、数年後が変わります。面談で、配属先の商流はどのあたりが多いですかと聞けるだけでも、会社の反応から多くが分かります。
すでに業界にいて、年収が上がらない人へ
数年働いても年収が動かないなら、原因はあなたの腕ではなく、立ち位置かもしれません。深い商流から浅い商流へ、あるいは元請けや自社開発側へ。同じスキルのまま、立ち位置を変えるだけで年収が動くのは、この構造があるからです。
ユニゾンキャリアは、IT・Web業界に特化した転職エージェントです。求人先の企業に繰り返しヒアリングして、求人票に載らない業務内容や環境まで把握した上で紹介するスタイルなので、商流や教育体制といったこの記事の論点を、具体的な企業名ベースで確認しながら入口を選べます。相談は無料、オンライン対応です。
\ 相談は無料・オンラインOK /
※対象:20代・高卒以上で、東京・埼玉・神奈川での就職を希望する方(今の居住地は問いません)。対象外の方は「未経験IT転職エージェント4社比較」へ。
すでにエンジニアとして実務経験が2年以上あるなら、TechGoという選択肢があります。ITエンジニア専門の転職エージェントで、コンサルやハイクラス求人に強い運営会社が手がけており、商流の浅い側・高年収側への移動を狙う転職に向いています。模擬面接は回数無制限、無料面談で市場価値の確認から始められます。
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※対象:実務経験2年以上のITエンジニアの方。
職種別の実額はプログラマーの年収を統計から見た記事でも確認できます。
よくある質問
未経験で自社開発に入るのは無理ですか
狭き門ですが、不可能ではありません。ただ現実的には、入りやすい入口から入って実務経験を作り、数年後に自社開発へ移る2段構えの方が確実です。最初の職種の選び方は「エンジニア職種図鑑」へ。
SESに入ってしまったら、もう年収は上がりませんか
上がります。経験を積んで商流の浅い側へ移る道は定番ですし、SESの中でも還元率の高い会社への転職で変わることもあります。大事なのは、今の自分の立ち位置を知っていることです。
商流はどうやって確認すればいいですか
面談や面接で、配属先の商流の深さ、エンド直・元請け直の案件比率を聞くのが直接的です。回答をはぐらかす会社は、それ自体が情報になります。業界に詳しいエージェント経由なら、応募前に確認できます。
1年目の年収はどのくらい下がりますか
入口によりますが、前職より下がるケースは珍しくありません。ただし2年目以降の伸び方が違います。数字は「未経験IT転職と年収のリアル」で解説しています。
まとめ
エンジニアの給料には源流があり、経由する会社の数だけ薄くなる。同じ腕でも、立ち位置で受け取る額が変わる。
だから年収の話は、頑張りの話の前に、構造の話です。そして構造は、知ってさえいれば選べます。
立ち位置は、入る前に選べる。
この「立ち位置」は、業界の外側にも当てはまります。産業ごとの賃金の伸びを厚労省の統計で並べると差は3倍でした(給料が上がらないのは、もう日本全体の話ではない)。
▶ 進め方の全体像は「未経験からIT転職・現実的ロードマップ」、SESの構造の詳細は「SESを辞めたいは甘えじゃない」へ。
筆者:カツジン(平成2年生まれ・九州在住)。銀行で10年決算書を読み、そのあとM&A仲介とITエンジニアの人材紹介を3年。会社の値段と、人の市場価値が決まる瞬間を、内側から見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。詳しくは運営者情報へ。
参考・出典
・経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」(多重下請け構造と取引適正化に関する公的な指摘)
※文中のお金の流れの金額は、構造を理解するための架空の計算例です。実際の比率・金額は会社や案件により異なります。冒頭の事例は、特定を避けるため詳細を変更しています。


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