QAエンジニアとは、バグを直す人ではなかった。厚労省の16タスクで自分で直す人は42.6%、仕事の中心は見つけて伝えること

夕方のゲーム会社の検証ルームで、黒いパーカーの女性テスターがスマートフォンを片手に、「不具合管理ボード」の「報告済み」の列に付箋を貼っている漫画風のイラスト。「修正済み」の列の付箋は3枚だけで、手前の机には番号札を付けたスマートフォンが並ぶ 未経験からIT転職
カツジン

書いている人:カツジン(元銀行員 → M&A仲介・IT人材紹介 → 経営)。企業が誰にいくら払うかを見てきた立場から書いています。詳しく

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42.6%

厚生労働省の職業情報で、QAエンジニアとして働く人のうち「バグの修正を自分で行う」と答えた人の割合です。16あるタスクの中で、いちばん低い数字でした。

先に結論を書きます。QAエンジニアは、バグを直す人ではなく、見つけて、書いて、伝える人です。そしてIPAのデータでは、テストの工程が開発の工数の3分の1を占めています。

QAエンジニアとは、何をする人か

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、QAエンジニアは「デバッグ作業」という職業の別名として載っています。別名にはQAテスター、ゲームテスターも並びます。

job tagは、開発から独立した第三者の立場でテストを繰り返し、ソフトウェアの品質を保証することをQA(Quality Assurance)と呼ぶ、と説明しています。

仕事の流れはこうです。確認の方針を決め、確認する項目の一覧を作り、日数と人数を見積もってチームを組む。開発の途中の単体テスト、組み合わせた結合テスト、全体を通す総合テストの各段階でバグを探す。

見つけたバグは、どの条件でどう誤動作するかをまとめて、作った人に伝えます。OSの更新などで改修したあとも、新しいバグが出ていないかを確かめます。

16のタスクで見ると、直すより見つけて伝える仕事

job tagが公表している16タスクの実施率を、5つに分けて全部並べます。

タスク 実施率
計画する
デバッグの所要日数、所要人数を検討する 94.4
確認内容一覧を作成する 92.6
デバッグの方針を検討する 90.7
デバッグ・チームをマネジメントする 90.7
テストする
全体を通して(総合テスト)のデバッグを行う 96.3
出来上がった部分をまとめ(結合テスト)、その段階でのデバッグを行う 94.4
開発の途中で(単体テスト)、出来上がった部分からデバッグを行う 90.7
伝える・考える
見つかったバグを一覧表の形でまとめ、開発担当者に連絡する 92.6
バグの原因を検討する 90.7
開発担当者とバグ修正の方法を検討する 75.9
ゲームのテスト
様々なスマートフォンの機種でゲームのバグを見つける 64.8
スマートフォンでゲームを行い、バグを見つける 61.1
パーソナル・コンピュータでゲームを行い、バグを見つける 59.3
ゲーム専用機等でゲームを行い、バグを見つける 51.9
直す
バグが関係するハードウェアの手直しを行う 46.3
バグの修正を自分で行う 42.6

単位は%。job tag「デバッグ作業」のタスク一覧(就業者へのWebモニター調査・直近更新2022年)。5つの分け方は当編集部。出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)

いちばん高いのは総合テストの96.3%。9割を超えるタスクが9つあり、計画・テスト・報告のどれもが並びます。

いちばん低いのが、バグの修正を自分で行う42.6%です。修正の方法を開発担当者と話し合う人は75.9%いて、直すのは作った人、という分担が見えます。

同じjob tagで、Webエンジニアにあたる「システムエンジニア(Webサービス開発)」は、「開発中に問題点等があればそれを修正する」の実施率が88.9%でした。

直す人と、見つけて伝える人。ここが、開発のエンジニアとQAエンジニアのいちばんの違いです。

Webエンジニアとはどんな仕事か。厚労省の31タスクを見たら、作るより直す仕事で、ネット業界の売上の8割超はサービスを動かす側にあった

夜の自室の机を真上から見た漫画風のイラスト。左手の人差し指で仕様書のバインダーの行を押さえ、右手の鉛筆でノートの表に確認項目を書き込んでいる。机の右には機種の違うスマートフォンが2台とマグカップ

求められるのは、読む・書く・説明する力

job tagの「しごと能力プロフィール」で、この職業のスキルを高い順に並べると、読解力3.9、文章力3.8、説明力3.8、クオリティチェック3.8、傾聴力3.6です(0〜7の尺度)。

上位5つのうち4つが、読む・書く・説明する・聞くという、言葉を扱う力です。仕様書を読み、どの条件でどう壊れるかを書き、作った人に説明する。バグ報告の仕事が、そのまま数字に出ています。

QAエンジニアの仕事の中心は、プログラムを書くことではなく、仕様を読み、壊れ方を書き、作った人に伝えることでした。未経験の人が前の仕事で使ってきた力と、この仕事が求める力は、思ったより重なっています。

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テストは、開発の工数の3分の1

その仕事は、開発全体のどのくらいを占めるのか。IPA(情報処理推進機構)の「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、国内のソフトウェア開発会社35社が出した受託開発のプロジェクトを集計しています。

工程 新規開発 改良開発
基本設計 18.2% 16.4%
詳細設計 17.2% 16.1%
製作(単体テストを含む) 31.6% 30.4%
結合テスト 19.9% 20.9%
総合テスト(ベンダ確認) 13.0% 16.3%
結合テスト+総合テスト 32.9% 37.2%

開発5工程の実績工数に占める比率の平均(新規開発N=270、改良開発N=580・2016〜2021年度)。要件定義とユーザ確認のテストは含まない。結合テスト+総合テストは平均値を当編集部が足した値(IPAは「P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1とはならないことに注意されたい」と注記)。出典:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」

結合テストと総合テストで、新規開発の工数の32.9%、改良開発では37.2%。製作の工程にも単体テストが含まれるので、テストに使われている工数は、開発5工程の3分の1を超えます。

IPAは相場観として、1,000行あたりのテストケースを結合テストで50個、総合テストで15個としています。見つかるバグは1万行あたり、結合テストで12個、総合テストで2個です。

一方、稼働したあとに見つかる不具合は、新規開発の中央値で10万行に1個(2004〜2021年度のデータ)。テストで見つかる数とは桁が2つ違います。バグの多くは、テストの工程で本番の前に止められています。

AIが入っても、テストは残るのか

IPAの2025年度ソフトウェア動向調査では、テスト工程にAIを導入済みの企業が31.7%(一部の部門・プロジェクトでの導入を含む)、ベンダー企業に限ると53.3%でした。

job tagの労働条件の欄は、テストの一部は自動化されているが、完全な自動化は難しく、今後も需要がある、と書いています。IT技術者の求人と応募の動きは、国の統計の5年分で別に確かめました。

Webエンジニアはオワコンか。国の統計を5年並べたら、市場は2割以上伸び、求人倍率は2.22倍から1.45倍に下がっていた

未経験から入れるのか。資格は要るのか

働いている人に、入る前に必要な実務経験を聞くと「特に必要ない」が46.9%、入職前の訓練期間も「特に必要ない」が40.8%でした。

job tagのIT関連21職業を並べると、実務経験は4番目、訓練期間は2番目に高い値です。Webエンジニアにあたる職業(27.5%と22.5%)の1.7〜1.8倍あります。

ITエンジニアとはどんな仕事か。厚労省の職業情報にあるIT職種21個を求人倍率で並べたら、0.11倍から8.91倍まで開いていた

ただし入口は2つに分かれます。job tagは、ソフトウェア開発のデバッグは開発経験を積んだベテランや中高年が担うことが多く、ゲームではアルバイトから検証会社などの正社員になるのが典型的なルートの1つ、としています。

働き方も幅があり、正規の職員が65.3%、契約社員22.4%、派遣社員20.4%、学生以外のアルバイト32.7%(複数回答)。未経験で入れる職業だからこそ、正社員の席かどうかは入る前に確かめる必要があります。

年収と求人の数

この職業が属する統計の区分(その他の情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発)等)では、年収578.5万円、ハローワークの求人賃金は月34.4万円、有効求人倍率は2.07倍です。

いずれも区分全体の値で、QAエンジニアだけの数字ではありません。

資格は要らない。ただし、ある

job tagの関連資格の欄は「関連する資格はありません」です。一方で、ソフトウェアテストの国際資格ISTQBの日本版として、JSTQB認定テスト技術者資格があります。

基礎(FL) 受験者 合格者 合格率
2022年度 1,764 1,244 70.5%
2023年度 3,465 2,598 75.0%
2024年度 4,037 2,936 72.7%
2025年度 4,013 2,557 63.7%
合計 14,866 10,290 69.2%

JSTQB Foundation Level試験。合計は2022年度以降の値で、2026年度分(8月19日現在・1,587人受験、955人合格)を含む。受験料22,000円(税込)、40問・60分、受験資格の制限なし。出典:一般財団法人日本科学技術連盟「JSTQB試験実施結果」(2026年8月19日現在)

基礎のFoundation Levelは、年に4,000人ほどが受けて、合格率は6割台から7割台です。

上位のAdvanced Levelになると、テストマネジメントが31〜42%、テストアナリストが38〜44%(2025年度までの各年度)に下がります。

入るための条件ではありません。ただ、テストの用語と手順を一通り知っていることを、応募の前に示す材料にはなります。

JSTQBの20年分の受験者数と合格率、Foundation Levelの章ごとの出題数は別の記事で並べました。

JSTQBとは何か。20年で延べ5万人が受けたテスト資格は、基礎の6割が受かり、上位の合格率はCBTになって2倍近くに上がった

よくある質問

QAエンジニアとは何をする仕事ですか?

ソフトウェアのテストを繰り返して品質を保証する仕事です。厚生労働省のjob tagでは「デバッグ作業」の別名として載っていて、16タスクの実施率は、総合テスト96.3%、所要日数・人数の検討94.4%、結合テスト94.4%、確認内容一覧の作成92.6%、バグの一覧化と開発担当者への連絡92.6%が高く、バグの修正を自分で行う人は42.6%です。

QAエンジニアとテスターの違いは何ですか?

job tagでは、QAエンジニアもQAテスターも「デバッグ作業」の職業別名で、同じ職業として扱われています。仕事の範囲はバグを見つけるだけの人から原因の検討や修正まで行う人まで幅があり、実施率はデバッグの方針の検討が90.7%、デバッグ・チームのマネジメントが90.7%と、計画や管理を担う人も多くいます。

QAエンジニアは未経験からなれますか?

job tagでは、入職前の実務経験が「特に必要ない」と考える人が46.9%で、IT関連21職業の中で4番目に高い値です。入職に必要な特定の学歴や資格はないとされ、ゲームのテストではアルバイトから正社員になるルートも紹介されています。一方で、ソフトウェア開発のテストは開発経験のあるベテランが担うことが多いとも書かれています。

QAエンジニアに資格は必要ですか?

必須の資格はなく、job tagの関連資格の欄も「関連する資格はありません」です。ソフトウェアテストの資格としてはJSTQB認定テスト技術者資格があり、Foundation Levelは2022年度以降で14,866人が受験して10,290人が合格(合格率69.2%)、受験料22,000円(税込)、受験資格の制限はありません。

QAエンジニアは、未経験で入れる人が多い職業です。その一方で、契約社員や派遣社員、アルバイトとして働く人も多く、同じ仕事でも雇われ方が分かれます。未経験で入るなら、最初の席を正社員で取れるかどうかが大きな分かれ目です。

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次の一手は1つです。いま使っているアプリを1つ開き、うまく動かない場面を探して、どの画面で、何をしたら、どうなったかを3行で書いてみてください。QAエンジニアの9割がやっているバグ報告の、いちばん小さな形です。

参考出典
厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「デバッグ作業」/IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」・「2025年度ソフトウェア動向調査」
一般財団法人日本科学技術連盟「JSTQB試験実施結果」

job tagのタスク実施率・学歴・訓練期間などは就業者へのWebモニター調査の値で、年収・求人倍率は職業が属する統計区分の値です。IPAの工数比率は国内ベンダの受託開発プロジェクトの集計で、Web系や自社サービスの開発を代表するものではありません。サービス内容・対象条件は公式サイトの記載(2026年9月時点)を確認してください。

カツジン

この記事を書いた人:カツジン

平成2年生まれ・九州在住

元銀行員。M&A仲介とIT人材紹介の会社で、会社の値段と人の市場価値が決まる現場を3年見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。

誰に、何のために書いているか

文系・未経験からITへ動くか迷っている人に向けて書いています。国の統計と、人材紹介で「企業が誰にいくら払うか」をみてきた経験から、いまどこにいて次に何をすれば年収が動くのかを書いています。きれいごとは書きません。

約束していること

数字は一次情報まで遡って確かめます。向いていない人がいることも、そのまま書きます。記事には広告を含みますが、条件に合わない人には勧めません。

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