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人材紹介にいたころ、SEになりたいという相談を受けるたびに、正直に言っていたことがあります。残業は覚悟したほうがいい、と。
現場で聞く話がそうだったので、疑ったことがありませんでした。今回、その思い込みを国の統計で確かめてみたら、外れていました。
「システムエンジニアはやめとけ」の理由として並ぶのは、残業が多い、給料が割に合わない、辞める人が多い。この3つに、ひとつずつ数字を当てていきます。
「残業が多い」を、144職種で並べてみた
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、職種ごとの「超過実労働時間数」が載っています。ひと月に、所定の時間を超えて働いた時間です。令和6年調査では144の職種が並んでいます。
ただし、このなかに「システムエンジニア」という区分はありません。以前SEの年収を調べたときに分かったことで、いちばん近いのはソフトウェア作成者(779,260人)とシステムコンサルタント・設計者(149,050人)の2つです。
この2つを、残業の多い職種から少ない職種までの物差しの上に置くと、こうなります。
| 職種 | 残業(月) |
|---|---|
| 大型トラック運転者 | 33時間 |
| 医師 | 19時間 |
| 建築技術者 | 17時間 |
| 金融営業 | 16時間 |
| システムコンサルタント・設計者 | 15時間 |
| ソフトウェア作成者 | 11時間 |
| 144職種の平均 | 11.0時間 |
| 総合事務員 | 10時間 |
| 営業 | 9時間 |
| 看護師 | 6時間 |
| 介護職員 | 5時間 |
令和6年6月分の超過実労働時間数。産業計・企業規模10人以上・男女計。表内の職種名は短縮しており、正式名称は順に「営業用大型貨物自動車運転者」「金融営業職業従事者」「その他の営業職業従事者」「介護職員(医療・福祉施設等)」。144職種の平均は労働者数で重みづけして当編集部が算出。出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別
ソフトウェア作成者は月11時間。144職種のちょうど真ん中だった
ソフトウェア作成者の残業は、月11時間でした。144職種のうち、これより多い職種が65、少ない職種が70、同じ11時間が8。上から数えても下から数えても、真ん中です。
144職種を労働者数で重みづけした平均も11.0時間で、中央値も11時間でした。この統計に載る2,925万人の平均と、同じだけ残業している職種です。トラック運転者の33時間、医師の19時間、建築技術者の17時間と並べると、はっきり少ない側にいます。
設計をする側は15時間。ただし年収は178.5万円高い
もうひとつのシステムコンサルタント・設計者は15時間で、上に34職種あります。要件を決め、顧客と向き合う側のほうが残業は4時間多い。ここは現場の実感どおりでした。
ただ、同じ表で年収を見ると、設計者は752.6万円、作成者は574.1万円です。残業が多い側は、年収も178.5万円高い。「残業が多くて給料が安い」というSE像は、統計の上ではどちらの職種にも当てはまりませんでした。
では、なぜ「やめとけ」が消えないのか
ここで、自分の思い込みがどこから来たのかを考えました。現場で残業の話をしていたのは、どんな人だったか。
思い当たったのは、雇われている会社と、働いている場所が違う人たちです。
統計に載る残業は、賃金台帳に書かれた分だけ

賃金構造基本統計調査の労働時間は、事業所の賃金台帳から取られます。払われた残業は載り、払われなかった残業は載りません。調査月も6月の1か月分です。
客先に常駐して働く形では、残業を指示するのは客先で、賃金台帳を持っているのは雇用主です。この2つが離れているほど、実際の時間と台帳の時間は離れやすい。以前SESを辞めたいという相談について書いた構造そのものです。
同じ客先常駐でも、派遣は単価も人数も国が公表していて、SESは人数すら統計にありません。その差と、一人常駐が偽装請負にあたる条件はSESはやめとけ?で確かめました。
つまり「残業が多い」は、SEという職種の話ではなく、契約と商流の話でした。SIerの下請け構造を調べたときの結論と、同じ場所に落ちます。
辞める人が多い、も業界で見ると低い側にいる
もうひとつの理由も確かめておきます。厚生労働省の新規学卒者の離職状況では、大卒の3年以内離職率は産業計33.8%に対して、情報通信業は27.2%でした。以前第二新卒とは何かを調べたときに出てきた数字です。
やめとけといちばん言われる業界が、辞める割合では低い側にいます。残業と同じく、実感と統計が逆を向いていました。
同じ「SE」の求人でも、商流の位置は書いていない
やめとけが当たるのは、職種ではなく会社の側でした。ただ、求人票の「システムエンジニア」の文字は、元請の設計者にも4次請けの常駐にも、同じように付いています。外から見分ける材料は、ほぼありません。
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「未経験はやめとけ」は、誰の話か
「システムエンジニア やめとけ」と一緒に、いちばん多く検索されている質問が「未経験はやめとけ?」でした。ここも同じ表で確かめられます。ソフトウェア作成者の残業を、年齢で分けたものです。
| 年齢 | 残業(月) | 人数 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 8時間 | 92,990人 |
| 25〜29歳 | 13時間 | 165,240人 |
| 30〜34歳 | 12時間 | 107,650人 |
| 35〜39歳 | 12時間 | 94,030人 |
| 40〜44歳 | 11時間 | 81,850人 |
| 45〜49歳 | 13時間 | 95,590人 |
| 全年齢 | 11時間 | 779,260人 |
ソフトウェア作成者の年齢階級別。人数は調査の推計労働者数で、50歳以上と19歳以下は省略した。出典:同上
20代前半の残業は8時間。負荷は、入口がいちばん軽い
20〜24歳は月8時間で、20代から40代の中でいちばん少ない。25〜29歳で13時間に上がり、そのあとは40代まで11〜13時間で横ばいです。年次が上がるほど残業が増えていく職種ではありません。
人数を見ると、20代は258,230人で全体の33.1%を占めます。3人に1人が20代の職種です。増えすぎだという声については、以前求人と就職の件数で確かめました。
人材紹介の現場で言えば、未経験で入った人が最初の1年で辞める理由は、残業ではありませんでした。この作業が自分に合うかどうかが、入ってから初めて分かった、というほうがずっと多かった。向き不向きの話は別にまとめています。
よくある質問
システムエンジニアはやめとけと言われるのはなぜですか?
残業が多い、給料が割に合わない、辞める人が多い、という3つが主な理由です。ただし厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、ソフトウェア作成者の残業は月11時間で144職種の真ん中、推定年収は574.1万円です。職種の統計と、客先常駐や多重下請けといった働く場所の実情が混ざって語られている面があります。
システムエンジニアの残業は月に何時間ですか?
令和6年賃金構造基本統計調査の職種別の値で、ソフトウェア作成者が月11時間、システムコンサルタント・設計者が月15時間です(産業計・企業規模10人以上・男女計・6月分の超過実労働時間数)。144職種を労働者数で加重した平均は11.0時間でした。賃金台帳に記載された時間が対象のため、支払われていない残業は含まれません。
システムエンジニアはきついですか?
残業時間で見ると、ソフトウェア作成者は144職種の真ん中で、トラック運転者や医師、建築技術者より少ない側です。きついと言われる要因は残業の長さより、客先常駐や多重下請けの構造で自分の裁量が効かないことにある場合が多く、職種よりも会社の立ち位置で変わります。
未経験からシステムエンジニアになるのはやめたほうがいいですか?
20〜24歳のソフトウェア作成者の残業は月8時間で、20代から40代の中でいちばん少ない水準です。20代が全体の33.1%を占め、若い人が多く入っている職種でもあります。やめたほうがいいかは残業では決まらず、仕事の中身が自分に合うかで決まるので、入る前に体験できる場で確かめるほうが確実です。
残業の前に、定時の155時間が合うかを確かめる
統計で分かったのは、残業が月11時間だということまでです。残りの所定内155時間、つまり仕事そのものが自分に合うかどうかは、表のどこにも書いてありません。ここが分からないまま入るのが、いちばん高くつきます。
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残業は月11時間で真ん中、辞める人は業界で低い側、年収は平均より上でした。
それでも「やめとけ」の4文字が引っかかるなら、気になっているのは残業ではない別のものだと思います。それは、何でしょうか。
参考出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」/同調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(政府統計の総合窓口 e-Stat)/厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
残業時間は厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の職種(小分類)別・産業計・企業規模10人以上・男女計における一般労働者(短時間労働者を除く)の超過実労働時間数(令和6年6月分)です。事業所の賃金台帳に基づく値のため、賃金が支払われていない時間外労働は含まれません。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で当編集部が算出した推定値で、同調査が年収として公表している値ではありません。144職種の平均・中央値・順位・20代の構成比も当編集部が算出しました。離職率は大卒の新規学卒者の3年以内の値で、中途入社は対象に含まれません。サービス内容・対象条件は公式サイトの記載(2026年9月時点)に基づくため、申込前に必ずご確認ください。


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