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人材紹介をしていた頃、営業出身の20代後半の男性をIT企業に推薦したことがあります。模擬面接では受け答えも滑らかで、正直、通ると思っていました。
結果は不合格。企業からのフィードバックは一行でした。準備された答えの、先が聞けなかった。
逆に、緊張で声が震えていた別の候補者が、同じ会社に通ったこともあります。詰まりながらも、全部自分の言葉だったからです。
面接は、話が上手いかどうかの勝負ではありません。では何の勝負なのか。それを5つの頻出質問に沿って、面接官の側から解いていきます。
未経験は、即戦力の土俵では戦えない
まず、前提を数字で押さえます。
厚生労働省の転職者実態調査によると、専門的・技術的な仕事で転職者を採用した理由の1位は、経験を活かし即戦力になるから(66.1%)。2位は専門知識・能力があるから(52.7%)です。事業所規模1,000人以上に絞ると、どちらも8割を超えます。
つまり技術職の中途採用は、原則として経験者を取るための仕組みです。未経験のあなたは、この土俵では最初から戦えません。
それでも未経験を面接に呼ぶ企業は、経験の代わりに別のものを確かめようとしています。それが次の3つです。
続くか。伸びるか。一緒に働けるか。
教育コストをかける投資が途中で消えないか。入社後に自分で学べるか。報告や相談が普通にできるか。未経験の面接で聞かれることは、ほぼすべてこの3つのどれかに紐づいています。これを頭に置いて、5つの質問を見てください。
Q1なぜ、IT業界なんですか?
ほぼ100%聞かれます。そして、いちばん差が出る質問です。
これで落ちはしませんが、何も残りません。将来性も手に職も、今日の応募者全員が言うからです。
面接官がこの質問で確かめているのは、ブームに乗っただけの人か、自分の体験から必然性を持って来た人か。つまり、続くかどうかです。
体験から語った瞬間、その動機は本人だけのものになります。動機の組み立て方は「志望動機の作り方」に書いたので、ここでは先に進みます。
Q2今、何か勉強していますか?
伸びるかどうかを見る、いちばん直接的な質問です。
ここで「入社が決まったら本格的に始めます」と答える人が、実は少なくありません。気持ちは分かりますが、面接官の耳には「まだ何もしていません」と届きます。
進捗が立派である必要はまったくありません。詰まっている話を含めて現在進行形で語れること自体が、学べる人の証拠になります。むしろ順調です楽しいですだけの報告は、本当にやってるのかなと思われます。詰まった話は、リアリティの担保です。
Q3前の会社を辞める理由は?
この質問だけは、地雷の位置を先に知っておいてください。
事実だったとしても、です。面接官が確かめているのは、不満で動く人か、目的で動く人か。不満で動く人は、次も不満で辞めると読まれます。前職への否定的な言葉は、そのまま自分の評価から引かれていく。
過去への不満を、これからの目的に置き換える。中身は同じでも、向いている方向が違います。
Q4地味な作業も多いですが、大丈夫ですか?
キラキラしたイメージだけで来ていないかの確認です。この質問が出るのは、企業側が過去に「思っていたのと違った」と早期離職された経験があるからです。
大丈夫です、頑張ります。これは答えになっていません。宣言には中身がないからです。
地味な部分をすでに体験していて、それでも続けている。その事実だけが、この質問への本当の回答になります。Q2で学習の話をしていれば、ここに自然に繋がります。
Q5最後に、何か質問はありますか?
逆質問です。特にありませんと答えて損をする人が、本当に多い。
面接官はここで、入社をどれだけ具体的に想像しているかを見ています。関心の深さが、質問の質にそのまま出るからです。
給与や休暇の質問が悪いわけではありませんが、それだけで終わると条件で選んでいる人に見えます。入社後の学びを聞く質問は、続く気と伸びる気の両方を一度に伝えられる。ちなみにこの質問への答えは、実際の入社後を書いた「未経験入社後の1年」とだいたい一致します。
模範解答を覚えた人から、落ちていく
ここまで読んで、伝わる答えを暗記したくなったかもしれません。それが一番危ないです。
冒頭の彼が落ちた理由を思い出してください。答えが悪かったのではなく、答えの先が続かなかった。
面接官は、良い答えのあとに必ずもう一段掘ります。それはなぜですか。具体的には。たとえば。暗記した答えはこの2問目で崩れます。元になる体験がないので、戻る場所がない。
逆に、自分の体験から出た答えは、掘られるほど強くなります。困ったら体験に戻ればいいだけだからです。声が震えていても通ったもう一人は、これができていました。
つまり面接対策の本体は、答えの暗記ではなく、体験の掘り起こしです。そしてもうひとつ。掘られて詰まる感覚は、本番前に一度味わっておいた方がいい。頭で分かっていても、初めてだと必ず詰まります。この練習だけは、ひとりでは難しい。
深掘りされる練習を、本番の前に済ませておく
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細かい疑問へ
技術的な質問はされる?
未経験採用では、深い技術質問はほぼ出ません。出るとしても学習状況の確認です。知らないことを聞かれたら、知ったかぶりせず、分かりませんと答えて調べ方を添える方が評価は上です。
緊張して上手く話せない
流暢さは評価にほぼ関係ありません。冒頭の話の通りで、詰まりながらの自分の言葉は、滑らかな暗記より強い。むしろ立て板に水の方が警戒されます。
年齢について聞かれたら
年齢そのものより、この年齢で動く理由の必然性が見られています。社会人経験で培った段取りや調整力を、入社後どう活かすかまで繋げてください。30代の戦い方は「30代から手に職は遅くない」に書いています。
何社くらい受けるべき?
面接は場数で確実に上手くなるので、1社目から本命にぶつけるのは避けた方がいい。複数社の並行が現実的です。応募先の選び方は「エージェント4社比較」へ。
結局、何を見られている?
技術力ではなく、なぜITなのかという動機の必然性と、入社後に学び続けられるかどうかが見られています。未経験採用では即戦力を期待していないため、現時点のスキルより、続く人かどうかの判断材料が求められます。
模範解答を覚えていくのは?
逆効果になりやすいです。用意された答えは面接官が何度も聞いているため、印象に残りません。詰まりながらでも自分の体験から出た言葉のほうが、入社後の再現性が想像できるぶん評価されます。
最後に、もう一度だけ冒頭の話を。
声が震えながら通った彼は、入社後もよく相談をくれました。あるとき、面接で話した在庫管理の自動化の話、あれ今の仕事でそのまま役に立ってますと笑っていました。
体験から出た動機は、面接を通すだけでなく、入社後の自分も支えます。だから、模範解答を探す時間があったら、自分の過去を掘ってください。話す材料は、もう持っているはずです。
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筆者:カツジン(平成2年生まれ・九州在住)。銀行で10年決算書を読み、そのあとM&A仲介とITエンジニアの人材紹介を3年。会社の値段と、人の市場価値が決まる瞬間を、内側から見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。詳しくは運営者情報へ。
参考・出典
・厚生労働省「令和2年 転職者実態調査の概況」(事業所調査:職種別・転職者を採用した理由。専門的・技術的な仕事では「経験を活かし即戦力になるから」66.1%、「専門知識・能力があるから」52.7%)
本記事について
質問の意図および評価の観点は、筆者が人材紹介で面接前の対策支援と選考後の企業フィードバックの双方に接してきた経験に基づく整理です。冒頭および文中の事例は、特定を避けるため詳細を一部変更しています。面接の進め方や評価基準は企業により異なります。


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