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「AIエンジニア やめとけ」で検索したということは、たぶん、なりたい気持ちが半分と、踏み出せない理由を探す気持ちが半分あるのだと思います。
検索結果に並ぶのは、数学が必要だとか、独学では無理だとか、入口の話がほとんどです。入ったあとに何をするのかは、あまり書かれていません。
2026年7月30日に、情報処理推進機構(IPA)が「DX動向2026」を公表しました。国内1,799社に聞いた調査です。そこにAIを導入した企業が、実際に何の効果を得たのかという数字が載っています。
AIを導入した企業のうち、売上や利益が向上したと答えた割合
出典:IPA「DX動向2026」(2026年7月30日公表、有効回答1,799社)
この数字が、「やめとけ」と言われる本当の理由につながっています。順に見ていきます。
AIの仕事は、思っているより内向きだ
IPAは、AIを導入して効果があったと答えた企業に、その効果の中身を聞いています。回答は、はっきり二極化していました。
出典:IPA「DX動向2026」図表3-14。AI導入の効果を「期待以上」「期待どおり」「一定の効果はあった」と答えた企業が対象。複数回答のため合計は100%を超える
効率化が91.6%に対して、売上向上は3.9%。23倍の開きがあります。
これはIPA自身も認めていて、報告書には「効果の中心は業務効率化・迅速化といった『内向き』の領域にとどまっており」「外向きの成果創出に至っている企業は少ない状況にある」と書かれています。調査した側が、そう総括しているわけです。
ここからAIエンジニアの仕事を逆算すると、見え方が変わります。
企業がAIに求めているのは、新しい事業でも、世の中を変えるサービスでもない。いま人がやっている作業を、少し速くすることです。問い合わせの分類、書類の下書き、集計の自動化。そういうものが仕事の中身になります。
最先端のモデルを作る仕事を想像して入ると、実務との差に戸惑うことになります
ただ、これを悪い話だと受け取る必要はないと思っています。人材紹介の現場にいたころ、続いた人と辞めた人を分けていたのは、能力より期待していた仕事と実際の仕事が、どれくらいズレていたかでした。地味だと知ったうえで入る人は、まず辞めません。
収入についても補足しておくと、国の賃金統計に「AIエンジニア」という独立した職種区分はありません。近い区分の実額は、以前書いたプログラマーの年収を統計から見た記事のほうで整理しています。
AIを使っている会社が、そもそも限られている
もう一つ、求人の話をします。同じ調査で、AIの導入状況を従業員規模別に見た数字があります。
AIを「導入している」と答えた企業の割合。出典:IPA「DX動向2026」図表3-4(1,001人以上n=378、301〜1,000人n=384、101〜300人n=448、100人以下n=583)
大企業では8割近くが導入しているのに、100人以下では16.6%。4.7倍の差があります。
さらに100人以下の企業では、「関心はあるがまだ特に予定はない」が34.6%、「今後も取組む予定はない」が28.5%。合わせて63.1%が、まだ動いていません。
これが意味するのは、シンプルな話です。AIエンジニアという職種は、それを必要とする会社の側が、まだ大企業に偏っている。中小企業に幅広く求人があるプログラマーやインフラエンジニアとは、そこが違います。
未経験から入る場合、この差は無視できません。入口の数が構造的に少ないからです。「求人が見つからない」という声には、根拠があります。
業種でも同じことが起きています。同じ調査を業種別に見ると、導入率が最も高いのは情報通信業の69.6%。次いで金融業・保険業が53.8%、製造業等が45.2%と続き、流通・小売業は33.8%で最も低くなっていました。
探す順番としては、この並びがそのまま優先順位になります。狙うべきは情報通信業と金融。業界を絞らずに求人を眺めていると、そもそもAIを使っていない会社ばかり見ることになります。
ちなみに、AIそのものに仕事を奪われる側の話は、以前まとめたAIで仕事はなくなるのかのほうで、職種別のデータを使って書いています。
「AIエンジニア」のどれを指すかで、答えが逆になる
「AIエンジニアはオワコン」「もういらない」という言い方を、検索するとよく見かけます。この真偽は、実は分かれます。
同じIPAの調査では、AI関連の人材を7種類に分けて、企業に足りているかどうかを聞いています。この分け方で見ると、答えが職種によって正反対になっていました。
半分以上の会社が「自社には必要ない」と答えた職種がある
まず、足りている・足りていない以前に、そもそも必要とされていない職種があります。
出典:IPA「DX動向2026」図表4-12(2025年度・n=1,781〜1,783)。AI関連人材7種別のうち4種別を抜粋
いちばん想像されやすい「最先端のAIを研究する人」は、56.7%の企業が「自社には必要ない」と答えています。実装する側のAI開発者でも40.7%。
しかもAI開発者は、この数字が年々増えています。「不足している」は2023年度63.7%→2024年度53.7%→2025年度49.9%と下がり続け、逆に「必要ない」は29.4%→40.7%と上がりました。
研究者・開発者に限れば、必要としない企業のほうが増えている方向です
足りないのは、現場を知っている側だった
ところが同じ表を、「不足している」で並べ替えると、順番がひっくり返ります。
「不足している」と答えた企業の割合。出典:IPA「DX動向2026」図表4-12(2025年度)
企業が足りないと言っているのは、最先端を作る人ではありません。現場の業務を知っていて、そこにAIを持ち込める人です。
ここで、この記事の最初に書いた3.9%と話がつながります。企業がAIでやりたいのは売上を伸ばすことではなく、いまの業務を速くすること。だとすれば、必要なのはいまの業務を知っている人のほうです。
これは、未経験から入る人にとって悪い話ではないと思っています。人材紹介の現場にいたころ、異業種から移って伸びた人は、たいてい前職の業務知識を持ち込んでいました。捨てる必要のある経歴のほうが、実は少ないです。
足りないのは現場を知っている側だと分かっても、自分の経歴の何がAIとつながるのかは、調べても出てきません。それは手を動かしてみないと見えない部分だからです。Python WinnerはAI・データ分析に特化したマンツーマンのスクールです(オンラインで全国どこからでも受講可)。講師と一対一なので、いまの仕事の話をしながら、その業務のどこをデータで扱えるのかを一緒に見ていけます。この記事で書いた地味な作業が自分に向くかどうかも、同時に確かめられます。向かないと分かればそれも収穫で、狭い入口で消耗する前に方向を変えられる。まずは無料の受講相談で、いまの経歴から何を試すべきかだけ聞いてみてください。会社を辞める必要も、いきなり大金を払う必要もありません。
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「AIに仕事を奪われる」の前に、企業がまだ動いていない
もうひとつ、よく検索される不安のほうにも触れておきます。AIに仕事を奪われるのではないか、という話です。
同じ調査で、AIの影響を踏まえて人材の準備に着手しているかを聞いた項目があります。
「着手している」と答えた企業の割合。出典:IPA「DX動向2026」図表4-13(n=1,775〜1,778)
AIでどの業務が変わるのかを把握できている企業が9.4%。これから必要になる人材像を把握できているのが8.4%。9割の企業は、まだそこまで進んでいません。
報告書も「多くの企業でAIの利活用とその拡大を踏まえた人材育成・確保対応が着手されていない状況にある」と書いています。
奪われる奪われないの前に、企業側がまだ手をつけていない。これが2026年時点の実態です。いま動く人にとっては、まだ席が決まっていないということでもあります。
それでも、人は足りていない

ここまで2つ、慎重になるべき理由を挙げました。ただ、同じ報告書には逆向きの事実も載っています。
ひとつは、市場が動いている速さです。生成AIを「導入している」と答えた企業の割合を年度で並べると、こうなります。
2023年度15.6%、2024年度22.6%、2025年度44.0%。2年で2.8倍、直近1年ではほぼ倍増しています。IPAも「2024年度から急激に伸びている」と書いています。いま導入率が低い会社も、これから触り始める側にいるということです。
もうひとつが、人の話です。IPAは、DXを推進する人材の過不足も調べています。報告書の記述はこうです。「依然として9割近くの企業が不足を感じており、慢性的な人材不足の状況に大きな変化は見られない」。
AI関連人材に限っても、「多くの人材で不足している状態となっている」と書かれています。一部で不足感が改善した職種はあるものの、データマネジメントなど、足りないままの領域が複数あるという整理です。
つまり、こういう状況です。
この3つは矛盾しません。むしろ、地味な仕事を続けられる人が少ないから足りない、と読むほうが自然です
「やめとけ」は、嘘ではありませんでした。ただ理由が、世間で言われているものとは違います。数学で挫折するからではなく、①想像していた仕事と違う ②入口が大企業に偏っている ③目指す層を間違えると、必要とされていない側に行き着く。この3つです。
この3つを先に知っていれば、判断はできます。地味な改善を積む仕事だと納得できて、大企業や情報通信業を軸に探し、先端研究ではなく現場にAIを持ち込む側を狙うなら、需要そのものは残っています。
なお、そもそも未経験から入れるのかという入口の話は、未経験からAIエンジニアは無理かのほうに、必要な学習の順序まで含めて書きました。
よくある質問
AIエンジニアはやめとけと言われるのはなぜですか?
数学が難しいからだと説明されることが多いですが、IPA「DX動向2026」を見ると理由は別にあります。AI導入の効果は業務効率化が91.6%を占める一方、売上や利益の向上は3.9%にとどまり、仕事の中身が社内の業務改善に寄っています。想像していた仕事との差が、続かない理由になりやすい領域です。
AIエンジニアはオワコンですか?いらないと言われるのはなぜですか?
職種によって答えが逆になります。同調査の図表4-12では、先端的なAIアルゴリズムを開発するAI研究者について56.7%の企業が「自社には必要ない」と回答し、AI開発者でも40.7%でした。一方で、現場の知見と基礎的AI知識を持ち自社への導入を推進できる従業員は69.6%、データマネジメント人材は71.9%の企業が「不足している」と答えています。研究職を指すなら「いらない」は外れていませんが、現場にAIを持ち込む側は不足したままです。
AIエンジニアの求人はどんな会社にありますか?
IPA「DX動向2026」では、AIを導入している企業は従業員1,001人以上で78.3%、100人以下では16.6%と4.7倍の差がありました。業種別では情報通信業が69.6%で最も高く、金融業・保険業53.8%が続きます。大企業と情報通信業に偏っているため、業界を絞らずに探すと効率が落ちます。
AIエンジニアの年収はいくらですか?
国の賃金統計にAIエンジニアという独立した職種区分はないため、公的な平均値は存在しません。近い区分としては令和6年賃金構造基本統計調査のソフトウェア作成者が574.1万円です。当サイトではプログラマーの年収を扱った記事で、この統計の中身と年齢別の推移を整理しています。
AIエンジニアの需要はこれから増えますか?
生成AIを導入している企業の割合は2023年度15.6%、2024年度22.6%、2025年度44.0%と、2年で2.8倍に増えています。またIPAは、DX推進人材について9割近くの企業が不足を感じており、慢性的な人材不足に大きな変化はないと報告しています。
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やめとけと言う人の多くは、AIエンジニアの仕事を華やかだと思ったまま止めています。地味だと知ってから始める人のほうが、たぶん長く続きます。
参考出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年7月30日公表・有効回答1,799社・実査はNTTデータ経営研究所)
本記事の数値はIPAの調査による企業側の自己申告であり、回答企業の業種構成や規模構成に依存します。AI導入の効果は「効果があった」と回答した企業に限定した設問のため、導入企業全体の割合ではありません。業種別の情報通信業はn=92と回答数が少なく、幅を持って見る必要があります。AI関連人材の充足状況および人材育成・確保への対応状況は、企業側から見た評価であり、求職者側の就職しやすさを直接示すものではありません。求人動向は個別企業により異なるため、実際の応募先の状況は各自でご確認ください。サービス内容・対象条件は公式サイトの記載(2026年9月時点)に基づくため、申込前に必ずご確認ください。


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