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求人票の「未経験歓迎」を開いて、そっと閉じたことがあると思います。
歓迎と書いてあっても、実際に採っているのは経験者なのではないか。そう疑うのは当然です。私も人材紹介にいたころ、同じ質問を何度も受けました。
この疑問は、統計で確かめられます。総務省の就業構造基本調査に、転職した人の「前の職業」と「今の職業」を突き合わせた表があるからです。
転職した人を、職業の移動で分けてみる
集計対象は、2017年10月以降に前の仕事を辞めて今の仕事に就いた1,233万人です。
このうち、今の職業が専門的・技術的職業になった人が212万3,500人いました。ITエンジニアはこの区分に入ります。設計や開発、研究、医療、教育などの専門職をまとめた分類です。
この212万人を、前の職業で二つに割ります。
出典:総務省「令和4年 就業構造基本調査」第150表。前職の職業別・現職の職業別の人口から当編集部が算出。専門的・技術的職業従事者にはIT技術者のほか、医療・教育・研究などの職業を含みます
転職して専門職に入った5人に2人は、別の職業から来ている。
82万3千人。未経験歓迎という言葉が、まったくの飾りというわけではありませんでした。
どこから来たのか
その82万3千人が、前に何をしていたかです。
同上。上位6区分を抜粋。割合は異職種から専門職に移った82万3,600人に対する比率

事務、サービス、販売。この3つで74.5%を占めます。専門職の隣から来ているわけではなく、まったく別の仕事をしていた人が大半でした。
人材紹介にいたころの実感とも合います。IT職に移った方の前職で多かったのは、営業と販売と事務です。技術系の学部を出ていない方のほうが、むしろ多かった。
ただ、この82万人がどうやって職種の壁を越えたのかは、この統計には出てきません。求人票を自分で読み解いて越えた人もいれば、間に人が入った人もいます。
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逆に、専門職から出ていった人もいる
同じ表を、反対側から読むこともできます。前職が専門職だった人が、その後どこへ行ったかです。
前の仕事が専門的・技術的職業だった転職者は209万8,800人。このうち今も専門職なのは130万900人で、79万7,900人はほかの職業に移っています。38.0%です。
同上。いずれも2017年10月以降に前職を辞め、調査時点で現職に就いている人の数
専門職は、入ってくる人と出ていく人がほぼ同じ数だけいる。
差は2万4,700人。入ってくる側が1.03倍わずかに多いだけで、実質は同数です。
ここから言えることは2つあります。ひとつは、専門職は外から入れない閉じた場所ではないこと。もうひとつは、一度入れば安泰という場所でもないことです。
入る難しさばかりが語られますが、数字の上では、入ったあとに離れる人も同じくらいいます。入口を通ることと、続けられることは別の問題です。
同じ職業で移った人と、何が違うのか
ここは正直に書きます。同じ職業のまま会社を移った130万人と、別の職業から入った82万人では、入口で見られるものが違います。
同職種の転職では、前職で何をやったかがそのまま材料になります。異職種では、その材料がありません。だから前の仕事の何が次に使えるのかを、自分で翻訳して渡す必要があります。
翻訳の例を挙げます。営業なら、顧客の要望を聞いて仕様に落とす作業は要件定義に近い。事務なら、手作業を減らすために手順を組み替えた経験は業務改善そのものです。サービス業なら、想定外が起きたときの優先順位のつけ方が運用に効きます。
採用側が見ているのは経歴そのものではありません。中途採用の選考で重視する項目のうち、学歴・経歴は23.1%と下位でした。この内訳は既卒の就活は厳しいのかにまとめています。
年齢はどこまで効くのか
もうひとつ、必ず聞かれるのが年齢です。
この統計は年齢別に職業移動を出していないので、ここでは断定できません。別の調査から年齢と転職の関係を整理した記事があるので、そちらを見てください。転職入職率と、転職後に賃金がどう動くかを年齢別に並べています。
異業種転職は何歳までかと、30代に絞った30代未経験のIT転職はどこまで現実的かが近い内容です。
IT職を狙う場合に変わること
専門的・技術的職業という区分は広く、IT職はそのなかの一部です。ただIT職には、他の専門職と違う点があります。
選考で見せる材料を、自分で作れることです。医療や教育の専門職は資格がないと入口に立てません。IT職は資格が必須ではなく、作ったものや学んだ記録がそのまま材料になります。
ただし実際に手を動かしている人は多くありません。転職した人のうち、学校や通信教育で学んだのは100人あたり3人でした。この数字は転職した人の66.1%は準備を何もしていなかったに書いています。
よくある質問
未経験から転職した人は実際にどれくらいいますか。
総務省の令和4年就業構造基本調査では、転職して専門的・技術的職業に就いた212万3,500人のうち、前職が別の職業だった人が82万2,600人で38.7%でした。5人に2人が異職種から移っています。
未経験から専門職に移った人は、前に何の仕事をしていましたか。
最も多いのは事務職の24万5,700人(29.9%)で、次いでサービス職業21万7,600人(26.5%)、販売14万9,400人(18.2%)です。この3つで74.5%を占めます。
未経験の転職で、経験者と何が違いますか。
同じ職業のまま会社を移る場合は前職の実績がそのまま材料になりますが、異職種ではそれがありません。前の仕事の何が次に使えるのかを自分で翻訳して渡す必要があります。中途採用の選考で重視される項目のうち、学歴・経歴は23.1%と下位です。
未経験からIT職に移る場合の特徴は何ですか。
IT職は資格が必須ではなく、作ったものや学んだ記録がそのまま選考の材料になります。一方で、転職した人のうち学校や通信教育で学んだのは100人あたり3人にとどまります。
未経験からの転職でいちばん時間を失うのが、そもそも未経験を採らない求人に応募し続けることです。求人票の「未経験歓迎」だけでは、その会社が本当に未経験を採ってきたのかは分かりません。
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対象は20代・高卒以上で、東京・埼玉・神奈川での就職を希望する方です(現在の居住地は問いません)。30代の方は30代未経験ITの現実に別の選択肢をまとめています。
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転職して専門職に入った人は212万人。
そのうち82万3千人は、別の職業から来ていました。
未経験歓迎という言葉の後ろに、その82万人がいます。
※ 集計対象は平成29年10月以降に前職を辞め、調査時点(2022年10月1日)で現職に就いている転職就業者です。専門的・技術的職業従事者は日本標準職業分類の大分類Bで、IT技術者のほか医療・教育・研究・法務などの職業を含みます。この区分に入った人がすべてIT職に就いたわけではありません。割合は当編集部が算出しました。前の仕事の経験を次にどう翻訳するかの記述は、筆者がIT・エンジニア領域の人材紹介に在籍していた際に見た傾向に基づく整理で、企業や職種により異なります。
参考出典:総務省統計局「令和4年 就業構造基本調査」全国編 第150表(総務省統計局)、厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」事業所調査


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