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入社して3ヶ月目。会議で飛び交う言葉が、ひとつも分からない。
聞きたいけれど、何を聞けばいいのかも分からない。周りは涼しい顔で頷いている。自分だけが、置いていかれている気がする。
未経験でIT業界に入った人が、ほぼ全員この場所を通ります。
元・IT人材紹介のカツジンです。送り出した人のその後を、本人からも企業からも聞いてきました。
この記事は、入社後1年で何が起きるかの予習です。脅すためではありません。先に知っていれば、来たときに折れずに済むからです。
最初の1年は、まっすぐ登らない
未経験の1年目は、右肩上がりに成長する実感はありません。実際には、いったん深く沈みます。
手応えの推移を線にすると、こうなります。
未経験入社1年目の手応えの推移(筆者が現場で聞き取った体感の整理)
谷は、だいたい4ヶ月前後に来ます。そして8ヶ月あたりで、風景が変わります。
順番に見ていきます。
- 1〜3ヶ月
- 言葉が通じない
研修や座学から始まる会社が多い時期です。ここで最初の壁が来ます。
デプロイ。リポジトリ。コンフリクト。会話の前提になっている単語が分からず、質問すべき場所すら見つからない。
ただ、隣の同期もたいてい同じ顔で黙っています。
- 3〜6ヶ月
- 自分の無力さを知る
現場に出ると、研修とのギャップに直面します。教わった通りにやっても動かない。先輩が3分で終える作業に、半日かかる。
ここが谷です。向いていないのでは、という疑いがいちばん強くなります。
ただ、企業はそれを織り込んでいます。半年で戦力になるとは、誰も思っていません。この時期に見られているのは成果ではなく、聞けるかどうかです。
- 6〜9ヶ月
- 点が線になる
ある日、急に視界が変わります。バラバラだった知識が、ひとつの流れとして繋がる。
エラーを見て原因の見当がつく。先輩の会話が理解できる。調べる場所が分かる。
この感覚を一度味わうと、仕事が面白くなります。
- 9〜12ヶ月
- 任され、先が見えてくる
一人で終えられる作業が増えます。後輩に教える場面も出てきます。
そして市場では、もう未経験者ではありません。1年の実務経験を持つ人として扱われ始めます。
1年を越えられるかは、根性より環境で決まる
ここで、公的なデータをひとつ。
厚生労働省が、新卒で就職した人の3年以内の離職率を公表しています。全体では34.9%。3人に1人が3年以内に辞めている計算です。
注目すべきは、その内訳です。入った会社の規模で、数字がまるで違います。
就職後3年以内の離職率(大学卒・事業所規模別)
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」(令和6年10月25日公表)より、大学卒の事業所規模別データを抜粋。全体は34.9%。
5人未満と1,000人以上で、離職率は2倍以上ちがいます。
これは新卒のデータですが、未経験入社にも同じ力学が働きます。人が続くかどうかは、本人の根性より、教える人がいる環境かどうかに大きく左右される。数字はそう言っています。
続けられるかは、入る前にかなり決まっている。
だから、どこに入るかを軽く決めてはいけません。同じ未経験入社でも、経験を積める現場に入れた人は1年で伸び、そうでない現場では時間だけが過ぎます。この構造は「SESを辞めたいは甘えじゃない」に書きました。お金の流れから見た解説は「同じエンジニアなのに年収が違う理由」にあります。
ちなみに、IT業界そのものの離職率が高いわけではありません。むしろ産業全体で見れば平均を下回っています(データはこちら)。
1年後、差がついていた理由
同じ時期に入り、同じ研修を受けても、1年後には差がついています。
見てきた限り、その差は地頭でも学歴でもありませんでした。同じ場面での、行動のちがいです。
並べてみると、能力の話がひとつも出てきません。
入社半年で乗り越えた方が、後から話してくれたことです
最後の行、社外の相談相手も効きます。社内では言いにくい話も、外の人になら話せる。転職を手伝ったエージェントに、入社後も相談し続けている人は珍しくありません。
入る前にできる準備は、ひとつだけ
身構えたかもしれません。ですが、事前にできることは多くありません。
技術は入ってから覚えるものです。先回りして完璧に学ぶのは無理があります。
やる価値があるのは、ひとつだけ。分からない状態に、慣れておくことです。
1年目は、分からないことに囲まれ続ける時間です。その状態が人生で初めてだと、それ自体が大きなストレスになります。
逆に、調べながら手を動かす経験を一度でもしておくと、谷の深さがまるで違います。
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基礎に触れておくと、最初の3ヶ月の言葉が通じない時期を短くできます。
そして何より、分からないことを人に聞く練習ができます。1年目の勝敗を分けるのは、まさにそこでした。
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よくある質問
1年目の年収は下がりますか
下がるケースがあります。ただしその後の伸び方が違います。スキルが評価に直結する分野なので、2年目以降の上がり方は前職の昇給ペースと別物です。詳しくは「未経験IT転職と年収のリアル」へ。
入社前にどこまで勉強すべきですか
完璧を目指す必要はありません。基本的な用語に触れ、調べながら手を動かす経験を一度しておけば十分です。技術は業務で覚えるほうが速く身につきます。
年齢が高めですが、1年目は不利ですか
技術の吸収では若手に分がありますが、報告や段取り、調整では社会人経験が効きます。30代からの進め方は「30代から手に職は遅くない」を参考にしてください。
入社後に合わないと感じたらどうすべきですか
仕事内容の問題か、配属先の環境の問題かを切り分けてください。環境が原因なら、職種を変えずに現場だけ変える手があります。他の選択肢は「エンジニア職種図鑑」で確認できます。
まとめ
最初の3ヶ月は言葉が通じません。4ヶ月あたりで谷が来ます。8ヶ月で点が線になり、1年で経験者として扱われ始めます。
そして1年を越えられるかどうかは、根性より、教える人がいる環境かどうかで決まります。数字がそれを示していました。
この記事を読んだ時点で、あなたはもう、何も知らずに飛び込む人ではありません。
知っていれば、通過点になる。
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筆者:カツジン(平成2年生まれ・九州在住)。銀行で10年決算書を読み、そのあとM&A仲介とITエンジニアの人材紹介を3年。会社の値段と、人の市場価値が決まる瞬間を、内側から見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。詳しくは運営者情報へ。
参考・出典
・厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」(令和6年10月25日公表/大学卒3年以内離職率34.9%、事業所規模別データ)
・厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」(産業別の入職率・離職率)
※月ごとの推移および1年後の差に関する記述は、筆者が人材紹介の現場で入社後の求職者・受け入れ企業の双方から聞き取った内容に基づく整理です。研修期間や配属の進み方は企業により異なります。


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