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想像してください。長い転職活動が終わって、あなたが内定を承諾した数日後のことです。
あなたの知らないところで、1通の請求書が発行されます。エージェントの会社から、あなたを採用した会社へ。だいたい、こんな中身です。
請求書
見本
※架空のイメージです。金額は厚生労働省の集計による全国平均(約103万円)を使用
金額は架空ではありません。厚生労働省の令和6年度の集計で、エージェント経由の就職1件あたりの手数料は平均約103万円。業界全体では、この手数料収入が年間で約9,835億円にのぼります。
あなたは1円も払っていません。相談も、書類添削も、模擬面接も、全部無料だったはずです。その裏で、この請求書が動いていました。
元・IT人材紹介のカツジンです。私はこの請求書を発行する側の会社に3年いました。今日は、この1枚から見えるものを全部書きます。仕組みを知っているかどうかで、エージェントというサービスの使い方の上手さが、まるで変わるからです。
あなたが商品ではなく、あなたの入社が商品
この請求書のポイントは、発行されるタイミングです。あなたが入社を決めたときだけ、発行される。あなたが応募をやめても、内定を辞退しても、企業には1円も請求されません。
成功報酬型と呼ばれる仕組みです。手数料の相場は想定年収の3割前後と言われていて、先ほどの平均103万円という公式の数字とも整合します。
つまりエージェントのビジネスは、あなたを売ることではなく、あなたの入社を成立させることで成り立っています。この一点を押さえると、彼らの行動が全部読めるようになります。
書類添削や模擬面接を無料で何度もやってくれるのは、善意ではありません。あなたの通過率がそのまま売上に直結するからです。求人票に載っていない社風や、面接官が見るポイントを教えてくれるのは、彼らが採用側と直接やりとりしている当事者だからです。
そしてもうひとつ、あまり知られていない力学があります。多くの紹介契約には、入社した人が早期に離職した場合の返金規定が入っています。あなたがすぐ辞めると、エージェントは受け取った手数料を返すことになる。だから彼らは、あなたが定着しそうな会社を本気で選びたがります。ミスマッチ防止は、彼らにとって美談ではなく死活問題です。
同じ理由で生まれる、圧の話
ここまでは、この仕組みがあなたに有利に働く面です。フェアに、逆の面も書きます。
成功報酬型は、決まらなければ売上がゼロです。そこから、担当者によっては応募や内定承諾を急かしてくる力学が生まれます。迷っているのに、なぜか背中を強く押される。あの感覚の正体は、あなたのためを思う熱意ではなく、構造の圧であることがあります。
もうひとつ。手数料は年収に連動し、企業との付き合いもあるため、あなたに最適な求人と、エージェントが決めやすい求人は、常に一致するとは限りません。
対処は難しくありません。主導権が自分にあると知っておくこと。それだけです。急かされても断っていい。合わない担当は変えてもらっていい。複数社を並行して比べていい。あなたは無料の利用者ではなく、この市場で103万円の価値が動く主役なので、遠慮する理由がどこにもありません。
人材紹介にいた頃、この仕組みを知った上で使う人と、知らずに使う人の差を、ずっと見ていました。
知らない人は、流されます。勧められた求人に順番に応募して、急かされて決めて、あとから、あれで良かったのかなと言う。
知っている人は、道具として使います。担当者の質を見比べ、企業の内部情報を引き出し、急かされたら一度持ち帰る。同じ無料サービスから、引き出すものの量がまるで違いました。
知っている人がやっていたこと
面談は本命と比較用の2社で受ける。エージェントの当たり外れはサービス名より担当者で決まるので、比べること自体が保険になります。
担当者には、遠慮なく企業の中身を聞く。離職率、残業の実態、配属先。彼らは答えを持っている当事者です。引き出さないともったいない。
急かされたら、一晩置く。それで壊れる縁なら、元々その程度の求人です。
どの会社を使うかは「未経験IT向けエージェント4社の正直比較」に、対象年齢と得意分野まで整理してあります。その中の1社だけ、この記事の文脈で紹介しておきます。
企業の中身まで聞ける、IT特化の1社
ユニゾンキャリアは、IT・Web業界に特化した転職エージェントです。求人先の企業に繰り返しヒアリングして、求人票に載らない業務内容や環境まで把握した上で紹介するスタイル。この記事で書いた、担当者から企業の本音を引き出す使い方が、いちばんやりやすいタイプです。相談は無料、オンライン対応。
\ 相談は無料・オンラインOK /
対象は20代・高卒以上で、東京・埼玉・神奈川での就職を希望する方(現在の居住地は問いません)。対象外の方は「4社比較」で全国対応のサービスも紹介しています。
実際にどれくらいの人が使っているのかは、未経験の求人はどこにあるかにまとめました。ほかの経路と並べると、位置づけが分かります。
細かい疑問に答えておくと
無料なのに、あとから請求されることは?
ありません。職業安定法により、紹介事業者が求職者から手数料を取ることは原則禁止されています。費用は最初から最後まで企業側の負担です。
途中でやめたり、紹介を断ったりできる?
できます。応募を見送るのも、内定を辞退するのも、利用自体をやめるのも自由です。
複数のエージェントを同時に使うのは失礼?
失礼ではなく普通のことで、エージェント側も併用前提で動いています。2社程度が管理しやすく現実的です。
無料のプログラミングスクールも同じ仕組み?
似ています。無料スクールの多くは、卒業生の就職先企業から紹介料を受け取る構造です。詳しくは「スクールが無料な理由」に書きました。
そもそも、なぜ無料で使える?
求職者ではなく、採用した企業が費用を払う仕組みだからです。厚生労働省の令和6年度職業紹介事業報告書では、常用就職1件あたりの手数料は約103万円でした。職業安定法により、紹介事業者が求職者から手数料を取ることは原則として禁止されています。
なぜ急かされる?
決まらなければ1円も入らない成功報酬型のため、担当者の側に決めてほしい動機が構造的にあります。急かされていると感じたら、その圧は自分の適性への評価ではなく、事業モデルから来ているものだと切り分けて考えてください。
最後に、銀行員だった頃の癖でひとつだけ。
請求書というのは、価値が動いた証拠です。あの103万円の請求書は、あなたという人材に、市場がつけた値段の一部です。無料で使えるからと遠慮がちに使うようなサービスではなく、あなたの価値を前提に回っている市場です。
仕組みは、これで全部見せました。あとは、使いこなす側で。
▶ 面談前の準備は「志望動機の作り方」、全体の進め方は「未経験からIT転職・現実的ロードマップ」へ。
筆者:カツジン(平成2年生まれ・九州在住)。銀行で10年決算書を読み、そのあとM&A仲介とITエンジニアの人材紹介を3年。会社の値段と、人の市場価値が決まる瞬間を内側で見てきました。いまは事業承継で小さな会社を経営しています。詳しくは運営者情報へ。
参考・出典
・厚生労働省「令和6年度 職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(常用就職1件あたりの手数料 約103万円、手数料収入 約9,835億円)
※冒頭の請求書は理解のための架空のイメージです。手数料の水準は企業・職種・契約により異なり、相場に関する記述は業界で一般的に言われる水準と筆者の実務経験に基づく整理です。


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